日本ラグビー協会は13日、日本代表次期ヘッドコーチ(HC)にエディー・ジョーンズ氏(63)が就任すると発表した。都内で行われた理事会で承認され、24年1月1日から9年ぶりにHCへ復帰する。

27年W杯オーストラリア大会後までの約4年契約で、14日に都内で記者会見を開く。ジョーンズ氏は、前回日本を指揮した15年W杯で南アフリカ戦での歴史的勝利を含む1次リーグ(L)3勝を挙げた。今年の同フランス大会では2勝2敗で1次L敗退した代表チームを、再びW杯準優勝2度の世界的指導者に託す。

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今回のHC人事では、残念ながら「透明性」は見えなかった。

13日午後8時から都内で行われた日本協会の取材対応。岩渕健輔専務理事(47)は「誰かが1人で決めるわけでなく、組織として決めるように進めた」と強調した。

日本協会は7月に選考プロセスの一部をオジャーズ・ベルンソン社に委託すると発表。第三者の評価を交えて透明性、公平性をもって進めることが目的だった。

しかし、協会からの進捗(しんちょく)発信がない中、豪メディアがW杯フランス大会中の9月24日、W杯開幕前にジョーンズ氏と日本協会関係者がオンラインで面接していたと報じた。同氏がオーストラリアと5年契約を結んでいる最中での報道。この日、岩渕専務理事は「選考会社を通じての情報収集。『HCをやりますか?』ではない」と“面接”は否定したが、節目節目で協会発の状況開示がないことで、情報の錯綜(さくそう)を招いた。

「公平性」の部分でも疑問は残る。

約80人だったという最初の候補リストには、自薦と他薦が混在していた。最終候補の3人に残ったフラン・ルディケ氏(55)は立候補。クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(東京ベイ)のHCとして、昨季のリーグワン初優勝に導いていた。

本人はW杯中のオンラインを含め、計2回の面接を行ったと明かしている。W杯過去2大会で日本の攻撃担当コーチを務めたトニー・ブラウン氏(48)、今年のW杯で準優勝を飾ったニュージーランドでディフェンスを担当したスコット・マクラウド氏(50)を入閣させる構想を持ち、12月7日の最終面接を経て「ビジョンはしっかり伝えられた」と振り返っていた。

対して他薦のジョーンズ氏の面接は「先週(7日)に初めて」(岩渕専務理事)行われ、W杯後の1度のみ。重要な候補者との直接対話が同等ではないことに、同専務理事は「(候補者との接触は)一様に同じ回数ではない」と認めた。

このような流れに加え、サントリー(現東京サントリーサンゴリアス)でキャリアを築いたジョーンズ氏と、土田雅人会長(61)は懇意とされる。関係者から「出来レースではないのか?」という声が相次いだのは致し方ないものだった。

今回の選考では、他国メディアでも多くの報道がなされ、その度に協会幹部は沈黙を貫いた。第三者機関を経由する初の試みを、岩渕専務理事は「情報をたくさん得ることができた」としつつ「皆さまの中で、いろいろな議論がなされていることも承知している」とした。

協会発の情報開示の欠如と、なし崩しともとれる進行。ファンや、他の候補者らに対し「透明性」と「公平性」は、最後まで示せなかった。【松本航】

◆日本代表HC選考の経緯(いずれも23年)

7月5日 HCを務めていたジェイミー・ジョセフ氏が、W杯フランス大会限りで退任する意向を表明。 同12日 理事会でジョセフ氏の退任が正式決定。

同17日 日本協会が次期HC選考業務の一部をオジャーズ・ベルンソン社に委託すると発表。第三者の評価を交えつつ透明性、公平性をもって選考を進めることを目的とし、同社のリストから協会内で絞り込みを進める。

12月7日 ジョーンズ氏、東京ベイHCのルディケ氏と都内で最終面接。

同13日 理事会でジョーンズ氏のHC就任を承認。