Bシードの常翔学園(大阪第3)が、6大会ぶり6度目の日本一へ最高のスタートを切った。1回戦を110-0で突破した桐生第一(群馬)に計11トライを浴びせ67-0の完封勝利。FWとBKが一体となった華麗な新世代のスタイルを披露した。昭和最後の王者が平成最後の大会でも頂点を目指し、元日の3回戦で黒沢尻工(岩手)と対戦する。Aシードの大阪桐蔭(大阪第1)は86-7で土佐塾(高知)に完勝した。

全員が走り、どこまでもボールをつなぐ。午前9時開始の試合で常翔学園が大観衆を魅了した。地元大阪勢では最初の登場で、第3グラウンドは陸上トラックにまで人があふれるほどの人気ぶり。奪った計11トライはFW4、BK7。複数トライは2本のWTB高井優だけで、FWとBKが一体となって攻め続けた。力強く、泥臭い、前身の大阪工大高時代とは違った新世代のスタイルを見せつけた。

「コツコツ努力してきたことが実った。春先はもたもたしていたんやけどね。やっと、どこからでも点が取れるようになりましたわ」。そう言って、野上友一監督(60)は目を細めた。

象徴がチームではNO8、高校日本代表ではWTBを務める石田吉平(3年)だ。来春進学予定の明大からはSHで声がかかった超万能選手。身長168センチと小柄だが強く、速く、いつまでも走り続ける。開始2分に中央ラックから石田が挙げた先制トライが、67得点圧勝の号砲になった。体脂肪率9%の石田は「食事にもこだわって、タックルされても倒れなくなりました。今日はお客さんが多くて緊張したけど、平常心でやれた」と笑顔で話した。

3年前から行う早朝練習が実った。朝6時半に集合し、約1時間の筋トレをするのを日課にした。兵庫から通う石田は5時、花園近くに住むCTB山本紫は5時半には家を出る。野上監督は「眠たいのによう頑張った。走るスピードと瞬発力が出てきたから、前が見えてパスも通せる。成果が出た」と満足そう。

途中出場ながら、後半20分に軽やかなステップから60メートル独走トライを挙げた山本紫は「このメンバーで全国制覇をしたい」と宣言。88年度の決勝戦は昭和天皇崩御のため中止となり、茗渓学園と両校優勝。昭和最後の王者が、6度目の日本一へ走り始めた。【益子浩一】