日本代表ロックのトンプソン・ルーク(38=近鉄)が、日本代表最多となるW杯通算13試合出場を達成した。先発で献身的な働きを見せて、今大会初めてのフル出場。小野沢宏時と12試合で並んでいた記録を更新した。4連勝での悲願の8強入りに貢献した。ニュージーランド(NZ)生まれで、初来日から15年。自称「おじいちゃん」の大ベテランが、記録と記憶で日本ラグビー界にその名を刻んだ。

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これが献身だ。38歳のトンプソンがボールを持つ仲間を後押しする。動きが止められても、もがく。今大会初のフル出場を終えるとペタリと芝生に座り込んだ。「めちゃくちゃうれしい。4回目(のW杯)だし、38歳だし、ラストチャンスだから」と喜んだ。

NZ・カンタベリー州代表だった04年、三洋電機(現パナソニック)のオファーで初来日。故郷で2車線だった高速道路の広さに驚き、刺し身は全て火を通した。「僕のイメージは2年だけ日本でやって、帰るつもりだった」。2年後には東大阪が本拠地の近鉄に加入。07年に日本代表初キャップをつかみ、W杯フランス大会のピッチに立った。

東大阪ではママチャリに乗る。練習の質が低い時には、迷うことなく「こんな練習ではダメだ!」と仲間をしかった。南アフリカから歴史的勝利を挙げた4年前、代表引退を表明。だが故障者が出た時の緊急招集に応じ続けた先に4度目W杯があった。「日本に来る前は4回W杯にいくのは絶対に無理と思って冗談みたいだった」。大会前には「僕の体は今は大丈夫だけれど、ちょっと疲れた」と今季限りの引退を表明している。

試合前は「君が代」を大声で歌った。初の8強進出を決めた試合で金字塔。「まだ終わってない。(準々決勝の)南アフリカに勝ちたい」。日本を愛し、日本に愛された38歳の物語はまだ終わらない。