貴乃花親方(35=元横綱)が5月31日、実母の藤田憲子さんが八百長裁判に出廷した場合、日本相撲協会審判部副部長を辞任する意向を固めた。同協会と北の湖理事長(元横綱)が、八百長疑惑記事を掲載した週刊現代の発行元・講談社などを名誉棄損で東京地裁に提訴した訴訟で、5月30日に憲子さんが10月16日の次回弁論で週刊現代側の証人として出廷することが判明。次男の同親方はこれに失望し、母親の証言で協会に名誉棄損や不利益があった場合、息子として責任を取ることを決めた。

 貴乃花親方が悲壮な覚悟を決めた。前日に行われた同訴訟の弁論手続きで、被告側の出した藤田さんの証人申請を東京地裁が承認。10月16日の次回弁論で原告側証人の北の湖理事長と、藤田さんが対決することとなった。同親方が苦悩の胸の内を明かした。

 貴乃花親方

 部屋を捨てて出ていった人とはいえ、母が私の属する日本相撲協会に対してこのような行動に出ようとしているとは…。もし本当に出廷し、協会に対して名誉棄損や不利益な発言があった場合、私は恥ずかしくて、お客さんの前で取組を裁く審判の仕事などできません。審判部副部長はもちろん、役員待遇も辞するつもりです。

 覚悟の裏には亡き父(先代二子山親方=元大関貴ノ花の花田満さん)の名誉を守る決意もある。週刊現代では07年3月10日号で、75年春場所で当時の貴ノ花が、北の湖に優勝決定戦で勝って初優勝した時に八百長があったと掲載した。藤田さんが被告側の証人として出廷するとなれば、父に対しての不利益な発言も考えられる。

 貴乃花親方

 もちろんそうなれば父にも申し訳ない。私は強い父にあこがれて相撲を始めました。横綱となり、親方として今も協会にお世話になっているのは、父の存在があったからこそですから。

 01年8月に両親が離婚し、05年5月30日に父が死亡して以降、貴乃花親方は兄勝氏(元横綱若乃花)、母の藤田さんとは絶縁状態となった。だが藤田さんに関しては「私に生をもたらしてくれた人ですから、どうしているか気にはなります。人を通して元気でいることは確認していますが」と話してきた。だからこそ「できれば出廷してほしくない」。次回弁論まで約4カ月。協会の要職にある次男は、母の出方を注視している。