<大相撲初場所>◇14日目◇24日◇東京・両国国技館

 関脇逸ノ城(21=湊)が約5分間の大相撲を制し、6勝目を挙げた。ともに次代の横綱候補と称される東前頭2枚目照ノ富士(23)と5年8カ月ぶりに水入りとなる熱戦を演じ、最後は執念で寄り切った。モンゴルから同じ航空機に乗って来日した同胞。負ければ三役の座をも奪われかねない一番で、意地を見せた。

 逸ノ城は細い目をつむり、額の汗を拭った。4分46秒8の熱戦に「長かったっす」。水入りもあった中、新三役を狙う照ノ富士の勝ち越しを阻止。将来の横綱候補同士の戦いを制した人気者に、14日間連続満員の国技館が大いに沸いた。

 手の内を知り尽くすからこそ、勝機を探った。10年3月に同便でモンゴルから来日。鳥取城北高では同部屋で寝食を共にした。ともに規格外の大きさで右四つが得意。がっぷり組むと、力比べが始まった。11秒、一気に寄る。さらに2度攻め、逆に2分15秒に押されるとグッと耐えた。3分20秒で二所ノ関審判長(元大関若嶋津)が手を挙げ、09年夏場所の時天空-阿覧戦以来の水入りとなった。

 約1分の待ち時間。考えたのは「残すこと、攻めること」。取組を控える豪栄道にまわしを締め直してもらい、再び土俵へ。相手の頭を押さえての左上手投げ「逸ノ城スペシャル」も狙い、最後は5度目の寄りで決着をつけた。「先に攻めようと思った。(左手が)きついっすね」。まわしをつかみ続けた左手の疲労が心地よかった。

 照ノ富士とは、カレー嫌いなど共通点も多い。締め込みも2人そろって来場所から黒に変えるという。高校では服も貸し借りした2歳年上の存在に「負けたくない気持ちはある」。2分超の取組で敗れた先場所の借りも返した。

 取組後は「勝ち越してないので(受ける)顔じゃないっす」と、テレビのインタビューを断った。負け越しは決まったが、三役に残れる可能性はある。あと一番。ここが正念場だ。【桑原亮】<水入りとは…>

 ◆制限なし

 長時間の取組で攻防が停止した時、行司や審判の判断で取組を一時中断すること。時間に決まりはなく、攻防が激しい場合は2分台でも入ることも。

 ◆凝視

 行司は両者の足の位置を見誤らぬよう、力士の休憩中も目を離さず立ち、まわしの位置や組み方なども確認。水入り前と同じ状態から行司が両者のまわしをたたく合図で再開。

 ◆再度の場合

 幕内では平成でこの日が14回目。再開後に2度目の水入りとなった際は協議の上、後の取組を挟んで2番後の取り直しとなる。十両以上では01年夏場所6日目の大関武双山-小結琴光喜戦(寄り切りで琴光喜の勝ち)が最後で9分44秒1を要した。

 ◆引き分け

 それでも水が入る場合は、引き分け。幕内では74年秋場所11日目の二子岳-三重ノ海の平幕対戦が最後。51年には32分を超える一番があったとされる。