阪神が広島に逆転勝ちし、令和の初勝利を飾った。5回に売り出し中の新人近本が逆転タイムリーを放った。今季初の4連勝で3位に浮上。勢いに乗るチームを、日刊スポーツ客員評論家の吉田義男氏が解説した。

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これも野球だろう。阪神は4安打で、6点を奪った。最大で「6」あった借金を完済。今年はとても不思議な勝ちが続いている。

吉田 時代が変わって、チームも変わった。それでいいんと違いますか。世代交代ですわ。開幕からちょうど1カ月がたった。そりゃあ、苦しみました。でもその1カ月間にすっかり世代交代した。その象徴が近本です。

2点リードされた阪神は、4、5回の攻撃で逆転に成功する。これまでの広島では考えられない連日のミスも出て、そこにまんまと付け入ることができた。

吉田 4回はノーヒットで1点とって、5回は1本のヒットでひっくり返すわけでしょ。こういうの、なかなかありませんで。その貴重な5回のヒットが近本で、糸原が続くわけです。わたしもいくらでも経験しているが、勢いというのは怖い。その勢いが若い芽を伸ばすんです。その後、マルテがホームランです。勢いとはそういうもんですわ。

阪神の盗塁王といえば赤星の印象が強いが、かつては吉田義男だった。“牛若丸”と称された守備の達人は、2度の盗塁王のタイトルも獲得している。

吉田 近本の動きには無駄がない。打つことも、走るほうにもです。特に走塁に“遊び”がない。高校、大学、社会人時代にしつけられているのがわかる。もちろん本人の努力あってのこと。一言いわせてもらうと70盗塁ぐらいはいくんと違いますか。冗談? わたし、冗談をいったことないんです。一方、広島ショートの田中広は守りでもボールが見えていない。ちょっと休ませるべきでしょう。

吉田氏は少年時代の新天皇陛下に野球解説をし、皇后雅子さまとは手紙のやりとりをした経験の持ち主で球界でもまれな存在だ。

吉田 時代はこうやって変わっていくんです。阪神はこの1カ月で変身した。まだまだ上にいきます。これから脚光を浴びるんです。わたしの願望でもあった優勝争いをしてくれそうですな。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

阪神対広島 お立ち台でヒーローインタビューを受ける近本(撮影・清水貴仁)
阪神対広島 お立ち台でヒーローインタビューを受ける近本(撮影・清水貴仁)