8月15日現在、日本ハムのクローザーは浦野博司投手(29)が務めている。プロ5年目の右腕は、正守護神の石川直也投手(22)が7月24日楽天戦(楽天生命パーク)で故障したことを受け、翌日の同25日に首脳陣から代役に抜てきされた。「冗談かと思った」と、本人は振り返る。ただ、抑え投手としての資質があることは、今季の成績に表れていた。

 守護神に必要な要素の1つである「三振奪取力」が際だっていた。奪三振率(投手が9回を完投した場合に奪う平均奪三振数)がチームトップの10・16(8月15日現在)をマークする。他に10点台の投手はチームにいない。キレのある直球と決め球のフォークのコンビネーションで、多くの打者のバットに空を切らせている。

 昨季まではプロ2年目の15年にマークした6・91が最高だった。右肩痛から復帰した昨季は4・64。以前との違いは、任された職場が変わったことだ。過去4年は先発を任されてきた。長いイニングを投げきることを目指す投球から、中継ぎとして短いイニングに全力を尽くす役回りとなった。さらに、右肩痛の不安も完全に払拭(ふっしょく)。より腕を振れる環境に身を置き、新たな魅力を開花させた。

 精神面でも強さが増した。本格的にブルペンの一員として稼働するのは今季が初めて。「これが、いいきっかけというか、自分が変われる瞬間になると思っている」と、前向きに話す。先発としては1年目の7勝がキャリアハイ。故障もあり、先発ローテ定着とはならなかった。中継ぎ転向は、突き抜けられなかった自分を変えるチャンスと捉えた。「今までは先発としてのプライドがあった。でも1度、そういうのは捨てて、新たにここから始まっていく。生きる道を探しながら、今はやっています」。

 今季は、どんな展開でもマウンドに上がれば三振を奪い、結果を出し続けたことで守護神への道を切り開いた。ここまで5度のセーブ機会は全て成功。適性を見せている。8月21日には浦野の地元、静岡でソフトバンク戦が開催される。まだ、プロ入り後は地元での登板はない。新境地を開いた右腕が、故郷に錦を飾る姿を見てみたい。【日本ハム担当 木下大輔】