「努力をしたら結果が出ると信じて打席に入りました」

 佐賀北の田中耀君(右翼・3年)は試合後、目にいっぱいの涙をためながら話してくれました。


 5番、ライトで出場した田中君。1、2打席はレフトへヒットを放ったものの、6回1死一二塁のチャンスにショートゴロ。その間に1点は挙げましたが、この場面でタイムリーヒットが出なかったことが悔やまれました。


写真右から2番目が田中耀君。この代は1人も辞めずに2年半を共にしてきました。「この2年半は“楽しかった”の一言に尽きます」と田中君
写真右から2番目が田中耀君。この代は1人も辞めずに2年半を共にしてきました。「この2年半は“楽しかった”の一言に尽きます」と田中君

 田中君にはこの甲子園に特別の思いがありました。

 小学校5年の夏-。父と見に来た甲子園決勝。そのカードは佐賀北対広陵でした。

 「生で見る甲子園に感動しました。佐賀北の満塁ホームラン。1球で試合が決まる甲子園。自分も絶対に佐賀北で野球をやって甲子園に来るんだと決めました」

 幼い田中君の心を動かした甲子園。

 「僕は佐賀北で甲子園に行く」

 以来、野球に打ちこみ佐賀北に入学。

 昨年夏、バッティングに物足りなさを感じ、プロ野球の動画を見てタイミングの取り方、バットのトップの位置、バットの出し方、軌道を研究。自らのプレーに取り入れ練習。この冬には1日1000本振り込んで力をつけました。


 そして-。つらくなったとき、自らの気持ちを奮い立たせるのは、07年甲子園の決勝DVDでした。

 「先輩たちの映像を見ると、全力疾走、声の出し方。1球に対する思いが全面に出ていて、何度見てもあきない。僕も気持ちが入るんです」

 どんなに落ち込んでいても、この映像を見ると元気が出る。

 時には1週間に2回も見ることも。原点を思い出して、再び明日に向かう。

 「明日も頑張ろう」

 憧れの先輩たちが、田中君の背中を押してくれました。

 全力疾走に声出し。不思議とその後の試合では結果が出たと言います。

 「先輩たちの映像は、今までの自分の支えになったと思います」


 07年甲子園、決勝戦で満塁ホームランを打った憧れの先輩、副島浩史さんからは、  「ストライクは思い切っていけ。甲子園レベルで甘い球を1球で仕留めないとダメだ」とアドバイスを受けて試合に臨みましたが、チャンスでのヒットを打てませんでした。

 「甲子園で勝つことの難しさを実感しました。でも…やっぱり甲子園は僕にとって夢の場所でした」


 佐賀北のユニホームを着て甲子園に出場する-小学校5年生から思い描いていた夢を実現して、今日、ひとつ区切りを迎えました。

 「甲子園の土は、取れるだけ取ってきました。記念にしたいと思います」

 7年間の成長の証の甲子園の土。

 そして田中耀君は、ここ甲子園から、また新たな道を歩むのでしょう。