2014年10月1日。戦力外を告げられた日からちょうど1年後のこの日。新たな一歩を踏み出した元プロ野球選手がいます。

 「どうしてもこの日に、ダイビングのお店をオープンさせたかった。今まで続けてきた野球へのケジメにならないから。それが、自分の区切りなんです」

 糸数敬作さん。06年、大学・社会人ドラフト3巡目で亜大から日本ハムに入団。09年にはプロ初勝利を含む4勝を挙げ活躍しましたが、12年には右肘を手術をするも、完治はしませんでした。

 朝、目が覚めるとまずは肘の痛みを確かめます。

 「今日は大丈夫かな…」

 そんなギリギリの状態が続く中、毎年、若くて力のある選手が入団。

 心のどこかに「もう長くはないだろうなぁ…」漠然とそんなことを考えていました。

 そして、2013年10月1日、球団から戦力外通告。

 「野球の世界に自分はもう必要ないんだ、と気持ちに区切りをつけるために」と、一度はトライアウトを受けましたが、他球団からの声はかかりませんでした。

 同時に、球団職員への誘いに、教員免許を持っているなら、地元沖縄で野球の指導者になってみては、という勧め。糸数さんはそのすべてを断り新しい道へ歩み出しました。

 それが、ダイビングショップ経営の道だったのです。

 「迷いはありませんでした。野球から離れて他のことをやってみたかったんです。それが、ダイビングでした」

現在もトレーニングは欠かさない。上半身は現役時代よりもマッチョに!?
現在もトレーニングは欠かさない。上半身は現役時代よりもマッチョに!?

 ダイビングとの出会いは11年オフのことでした。

 義理のお兄さんに誘われてダイビング。この一度の経験が糸数さんの人生を変えました。

 生まれ育った沖縄の海の素晴らしさに、一瞬で心を奪われました。

 「潜ってみたらスゴかった。まるで宇宙のよう。テレビで見た世界が目の前に広がっている。とにかく、衝撃でした」

 このときライセンスも取得。漠然と「これを仕事にすることもできるんだ…いいなぁ…」と思っていたそうです。

 その後3年間、苦しいプロ野球生活を続けながらも心の底では新たな道を思い描いていました。

 だから、戦力外通告を受けても、糸数さんは下を向きませんでした。それどころか、新しい道へのワクワクした気持ちでいっぱいだったと言います。

 「戦力外を通告されたとき、この先の人生に迷いはありませんでした。自分みたいに、野球が終わったら何をしようとか、考えている人はいないと思います」

 14年2月から9月まで、知人のダイビングショップで下働きをしながらダイブ・マスターを取得。最初は雑用から始まり、予約が多い日は朝5時起きで準備にとりかかり1日5本も潜る日も。忙しい毎日の中で、ダイビングをより安全にお客様が楽しんでくれるための知識と技術を身に着けました。ハードな毎日に、プロ野球を辞めた当初は97キロだった体重は8カ月で11キロも減りました。

 「でも、不思議と毎日が楽しいんです。自分の方がダイビングを楽しんでいる感じ。夜遅く朝早い日もたくさんありました。でも、不思議と翌日は寝起きがいいんです。あれ、こんなに朝が強かったっけ? っていうくらいパッと目が覚める。本当に楽しいから疲れないんです。好きなことをやるってこんな感じなんですね。もちろん野球も好きなことで、幸せでしたが、違う元気、エネルギーが出ている感じです」

免許のないお客様にも、体験ダイビングで楽しんでもらえる。丁寧な説明で安心です!
免許のないお客様にも、体験ダイビングで楽しんでもらえる。丁寧な説明で安心です!

 野球で培った経験も生きました。まだまだ衰えていない体力はもちろん、今、お客さんがどんな状況なのかを表情で読み取る目。ひとつ間違えば大事故につながりかねない。早めに察知して対応する。それも、野球人生で得た“目配り・気配り”でした。そして、何より厳しい野球環境で得た上下関係。

 「野球はタテ社会が厳しい。先輩の言うことは絶対でしたから。でも、そのおかげで、どんどん知らない世界にも入っていける。野球で経験した厳しさを思えば、まだまだ頑張れます」

 持ち前の明るさと、“元プロ野球選手”を看板に、新規参入が難しいと言われるダイビング業界にも快く受け入れてもらえ、港でもすでに人気者。今は人と人とのつながりを第一にして、いろいろな場に出向き交友の場も広げています。奥さんも、ダイビングを1から勉強。7名のスタッフを従え、10月1日のオープンから順調な滑り出しを見せています。

 「今は、毎日が楽しすぎてあっという間です。プロ野球に未練はないの? ってよく聞かれるんです。野球をやりたいなぁって思うことはありますよ。でも、それは草野球レベルです(笑)。プロ野球に未練は全くありません。テレビを見ていても、現役時代は“なんで俺じゃないんだ! 打たれろ!”なんて、悔しい気持ちでいっぱいでした。でも、今は違う。すごいな~。頑張れ、頑張れって(笑)。ファン目線ですよね。全然気持ちが違います」

 昨年11月、日本ハムの国頭村での秋季キャンプも見学に。「みんな頑張っている姿がうれしかったです!」そう言って楽しそうに笑いました。

常にポジティブで前向き。この明るさが、人を引き付けるのでしょう
常にポジティブで前向き。この明るさが、人を引き付けるのでしょう

 “ダイビングショップをオープンする”という目標に向かって無我夢中で突っ走った1年。

 プロ野球界での居場所を失い、今、新たに自分の道をゼロから切り拓き居場所を作った。

 今の自分が一番輝ける、その場所を。

 取材では、終始笑顔で話してくれた糸数さん。今の自分に自信を持って胸を張れる。だからこそ、笑顔で堂々と過去の自分とも向き合えるのでしょう。

 「“キレイ!”と、沖縄の海に感動してくれたり、終わった後に、“また来ます”と言ってくれるのが本当にうれしい。この仕事は、その積み重ねだと思っています」

 「この先、漁師もやってみたい」「沖縄そば屋もやってみたいなぁ」糸数さんの口から次々出てくる言葉。広がる未来予想図に、将来の限りない可能性を感じました。

 実は、私もダイビングは免許を取得していて大好き! 

 よし! 今度は沖縄の海を潜ってみよう! もちろん、「ダイビング20」でね!

 Okinawa Diving Shop

 ~Diving20(二ーゼロ)~

 青の洞窟のご案内はお任せ! 託児サービスも充実。ダイビングは冬も楽しめます!

【ご予約・お問合せ】

電話080-2723-2020

メール diving20@gmail.com

公式サイト diving20.ti-da.net

糸数さんの公式ブログ k-39.ti-da.net

今月1月には読谷に事務所もオープン。託児所も完備で安心してダイビングができます
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