春の神奈川に、県立旋風が吹き荒れた。文武両道の進学校、相模原が橘との「公立対決」を8回コールドで制し、初の関東大会出場を決めた。エース右腕の宮崎晃亮投手(3年)が7回途中自責3で粘り、打線は16安打で13点を奪った。公立勢の決勝進出は04年の横浜商以来。

 ゴールデンウイークに突入したポカポカ陽気の横浜で、相模原の強力打線が爆発だ。1回に2点を先取すると、2点差に迫られた4回は1死満塁から、エース宮崎が走者一掃の3点適時二塁打を放って突き放す。16安打で13点を奪い、東京五輪が開催された1964年の創部以来、初の決勝進出。佐相真澄監督(56)は「感無量です。県立高校として、これからの指針になります」と感激した。

 全国屈指の激戦区神奈川で、昨夏は初の8強、昨秋は49年ぶりの4強、そして今春初の関東大会出場と、3大会連続で歴史的快進撃を続ける。12年から、川崎北でも好成績を残した公立の名指導者、佐相監督が就任。エース宮崎は「目指すところが高くなった」と言う。

 関東大会出場を逃した昨秋以降は、「甲子園出場」ではなく「優勝」を目標に掲げた。グラウンドは陸上部と併用で、午後7時半には完全下校のため、平日は2時間程度の練習しかできない。その中で、狭い球場を打撃ゾーン、守備ゾーン、トレーニングゾーンに区分し、短い時間で一斉に効率的な練習を行ってきた。

 2年前にはグラウンド横に50メートルの砂場を新設し、下半身を強化。満杯に水を入れた18リットルのポリタンクを持って走ることもある。宮崎は「私立が相手だと気持ちが入る」と、対抗心を持って努力を続けてきた。偏差値65の進学校らしく、試合前日の1日まで、2日連続の模擬テストだった。ゴールデンウイークに入って、ようやく勉強は一段落。鉛筆は置いて、今日3日の決勝は、再び「打倒私立」に挑戦する。【前田祐輔】

 ◆神奈川県の公立高校の成績 春季県大会では、00年以降は01年の県立百合丘、04年の市立横浜商が決勝に進出したが、ともに準優勝。公立勢の優勝は、83年の横浜商が最後になる。相模原・佐相監督が率いた県立川崎北は、07年秋季県大会で4強入りした。夏の甲子園に出場した公立は、90年の横浜商以降なく、県立では51年の希望ケ丘が最後になる。