29年ぶりの甲子園出場を目指す土浦日大は、身長163センチの「1番捕手」、宮部明憲主将(3年)が3安打2打点、2盗塁3得点と活躍し、逆転で水戸啓明を破った。大ブレークした西武森友哉捕手(19)にあこがれ、“シャコタン打法”を徹底研究。「1番」「捕手」「主将」と3役をこなして、勝利に貢献した。

 163センチの小柄な体をグッと低くして、1番宮部が相手投手をにらみつける。1点勝ち越された直後の7回1死三塁。カウント1-2と追い込まれながら食らいつき、打球は三塁前に転がった。50メートル6秒1の俊足を飛ばして、一塁へ全力疾走。同点の内野安打に「なるべく早く追い付きたかった」と、満面の笑みを浮かべた。

 茨城大会の公式パンフレットに「165センチ」と記される身長は、「163センチです」と告白。憧れは170センチと小柄ながら大ブレーク中の西武森だ。大阪桐蔭時代やプロ入り後の映像のスロー再生を繰り返し、重心を低く構える“シャコタン打法”を徹底研究する。

 「低く構えた方が、相手のピッチャーも投げにくい。自分のポイントで強く打つことを意識しています」と、本家同様フルスイングが信条だ。俊足を生かして、今春から高校野球界でも異例の「1番捕手」をこなす。3安打2打点に加え、2盗塁3得点とユニホームを泥だらけにして駆け回った。

 茨城・大洗町出身で、自宅の目の前にサーファーの聖地、大洗海岸が広がる。父弘己さん(48)は農業を営み、米、サツマイモ、大根、ニンジンなどを栽培。幼少時から「大根1本抜くと、10円もらいました」と、収穫時の手伝いがアルバイトだった。砂浜を走り、広大な畑でお小遣いを稼ぎながら、下半身を強化。大自然の中で培ったナチュラルパワーが強打の源だ。

 大会前は、実家の野菜を中心に1カ月間で3キロ増量し、戦う体にビルドアップ。次戦は強敵、つくば秀英と対戦。もちろん目標は甲子園だが「野菜、おいしいです」と、家業のPRも忘れなかった。【前田祐輔】

 ◆宮部明憲(みやべ・あきのり)1997年(平9)4月26日、茨城・大洗町生まれ。大洗夏海小1年で野球を始める。大洗南中から、土浦日大に進学。昨夏は三塁手として出場し、2回戦の取手一戦の9回に三直を好捕し、三重殺を記録した。163センチ、72キロ。右投げ右打ち。