木更津総合の最速142キロ左腕・早川隆久投手(3年)が、逆境をはねのけて2年連続の春1勝をつかんだ。10奪三振で9回完投。この日最速140キロを計測した直球がさえた。昨秋の神宮大会後に判明した腰の疲労骨折から復活したエースは、打っても6回に自らを援護する中前2点適時打。「練習できなかった2カ月半で、体を鍛えた成果が出た」。今大会の関東勢初勝利に導いた。

 狙って奪った3連続三振だった。3回に自らのバント処理のミス(記録は投安)で招いたピンチ。「自爆して出したランナー。全員三振で抑える」。大沢翔捕手(3年)から「1点はOK」と声がかかっても、直球勝負を挑んだ。3番高階は外角で見逃し三振。4番上出は外角高め、5番兼村は内角高めを振らせた。「狙われているのは分かっていたけど、打たれない自信があった」。体を動かせない時期に上半身だけの筋トレを行い、伸びが増した直球でねじ伏せた。

 絶望を乗り越えてきた。昨年12月、病院でエックス線写真を見て崩れ落ちた。「センバツに間に合わない」。わずかな望みをかけて手術を回避したが、帰りの車内では言葉を失った。絶対安静と言われても、周囲の目を盗んで練習しようとした日もあった。「みんなが焦るなと言ってくれたから、ここまで来られた」。自分の体と、復活を待つ人たちのために、苦手だった牛乳や野菜も口に入れた。

 1年前は、勝利した岡山理大付戦も「何を投げたか覚えていない」というほど緊張していた。今年は違う。130球での完投勝利にも「最後に2点取られたし、球数も多かった。まだまだです」。仲間から「タカピー」と呼ばれるイケメンエースは、最後まで冷静だった。【鹿野雄太】

 ◆早川隆久(はやかわ・たかひさ)1998年(平10)7月6日、千葉県生まれ。上堺小1年からソフトボールを始める。横芝中では軟式野球部に所属。一塁手兼投手。木更津総合では1年秋に背番号「10」でベンチ入り。昨春センバツは2試合に先発して1勝。178センチ、72キロ。左投げ左打ち。家族は両親と姉2人。