元NHK解説者の鍛治舎巧監督(64)率いる秀岳館(熊本)が初のベスト8入りを決めた。初戦で完封勝利を挙げた南陽工(山口)のエース重冨に3本塁打を含む18安打を浴びせ、16点を奪った。
試合後のインタビューで鍛治舎監督はまるで解説者のような語り口で、重冨投手攻略を説明した。
「重冨くんの前回(市和歌山戦)の投球数は137球。うちストレートが87球。50球が変化球。50球のうちストライクは17球でした。こういうデータが出ていましたので、ストレートに的を絞る、低めの変化球に手を出さない。この2点を選手に伝えました」。
秀岳館打線は1回、その指示通りのバッティングで8点を奪った。
3ランを含む5安打はすべて直球を打ったもの。この回重冨は38球を投げたがうち29球が直球。変化球(カーブ、スライダー、スプリット)は9球投げたが8球がボール。1球ファウルがあったが2ストライクに追い込まれてのもので、若いカウントの変化球には手を出していない。(1)直球が多い(2)変化球はボールになる確率が高い、という事前のデータ通りだった。打つべくして打ったと言っていい。
鍛治舎監督は社会人野球でも監督を務めた。データ野球は同じ相手と何度も対戦する社会人野球で培ってきた。
「プロセスも大事ですが数字と結果なんです。特に数字は説得力があります。今の子は感覚で言っても納得しませんから」。
数字(データ)は相手投手の攻略だけではない。毎日の練習やチーム作りにも生かしているという。
「全員で毎朝特打をするんです。100本打って何本ヒットが出るか。最初は30~40本だったのが7割を超えるようになりました」。
日々、数字を出すことで選手の取り組みが変わる。
「冬場はプロテインを飲んだり、毎日6食取って体重を増やす取り組みをしました。甲子園の優勝チームの平均体重は75キロなんだそうです。今回ベンチ入り18人の平均体重は77キロぐらいあると思います。体重では優勝チームを超えました」と鍛治舎監督は笑った。
秀岳館は2回以降も得点を重ね16-0で圧勝した。
それでも「甲子園の中京大中京と日本文理の決勝戦(09年、6点リードの中京大中京が最終回1点差に迫られ10-9で優勝)のようなことがありますから。大量リードしていても何が起こるか分からない。それが甲子園」と最後まで手綱を緩めることはしなかった。
明日28日の準々決勝の相手は木更津総合(千葉)。「早川くんはコントロール抜群。低めの直球も130キロ台中盤が出る。簡単に打てるわけがない。胸を借りるつもりで戦います」。
初戦の花咲徳栄戦ではサイン盗み疑惑で審判に注意された。
「選手に聞いたら『やってない』って言うんですよ。でも紛らわしい行為はいけない。事実、注意されたんですから。選手全員に『するな』と徹底させました」。
春の甲子園で旋風を起こしつつある秀岳館。その戦いから目が離せなくなってきた。
◆鍛治舎巧(かじしゃ・たくみ)1951年(昭26)5月2日、岐阜県生まれ。県岐阜商で69年、センバツ通算100号を放つ。早大では大学日本代表の4番を務め、東京6大学通算800号本塁打を記録。74年に松下電器(現パナソニック)に入社し、81年秋に引退。86年から91年まで同社監督を務め、89年から91年まで日本代表コーチも兼任。85年から10年までNHKの高校野球解説委員を務めた。14年3月末でパナソニック専務役員を退任し、秀岳館監督に就任。

