東大で昨年中心選手として活躍した酒井捷(すぐる)さん(4年=仙台二)は、実家のある宮城・仙台市からその瞬間を見届けた。「本当にドキドキしました。2アウトからの得点が2イニング続いて、流れが一気にこっちへ来ましたね。後輩たちは本当によく頑張りました」とねぎらった。
入学時から他5校の壁は高かった。あと1本が出ずに敗れたことは何度だってある。コツコツと積み上げてきた目標は「年1勝」から次第に「先勝」へと上向きし、ついには勝ち点奪取に向けて「3戦目までもつれる戦いをしよう」が合言葉に。「年々、みんなの基準が上がっていったことが今回の成果につながってると思います。後輩たちは僕らの悔しいところをずっと見ていた。いざこうやって勝ち点を得られたら、なんだか彼らがうらやましく見えますね。輝いてみえるというか」と、ちょっぴり焼きもちを焼いてしまうほどまぶしかった。
野球部在籍時は50メートル走6秒0の快足を生かし、2年秋にはリーグ最多の5本の二塁打を放つなど打率3割1分6厘でベストナインに選ばれた。大学日本代表の候補合宿にも選ばれ、東大史上初の野手としてプロ野球選手誕生に期待が高まった。しかし昨秋のドラフト会議ではどの球団からも指名はなく、選手として野球をやることに一区切りをつけた。
大学に在籍しながら就職活動に励み、先日、無事に就活を終えた。卒業までの期間じっくり過ごしていた中で訪れた吉報を通じ、改めて東京6大学リーグに東大が所属する存在意義を感じた。「東大が試合で勝ち、勝ち点を得ることでこれだけ盛り上がる。これだけ多くの『おめでとう』という声が届くということに東大が6大学にいる意味があると思いましたし、現役部員たちが頑張る価値があると思いました」。
春のリーグはまだ続く。晴れて勝ち点を得たが「ここを頂点と思わないようにしてほしい」と、OBらしくちょっぴり辛口なエールを送ることも忘れない。いつも変わらず温かい目で見守っている。
◆酒井捷(さかい・すぐる)2003年(平15)10月14日、宮城・仙台市生まれ。小学2年で寺岡ブラザーズで野球を始め、寺岡中-仙台二を経て東大に進学。東大進学後は俊足好打で2年春からレギュラーを奪取し、同秋にベストナイン選出。目標とする選手はイチロー、座右の銘は「断乎前進」。卒業後は内定先の一般企業に進む予定。



