常葉菊川17失点でも堂々準V/夏の甲子園
<全国高校野球選手権:大阪桐蔭17-0常葉学園菊川>◇18日◇決勝
胸を張れ、常葉菊川ナイン! 静岡県勢で35年ぶりに決勝に臨んだ常葉学園菊川が、0-17で大阪桐蔭(大阪)に敗れた。左ひじ痛を抱えながらも先発したエース戸狩聡希(3年)が、1回に満塁本塁打を浴びるなど3回5失点。後続の投手も、勢いを止めることはできなかった。失点、被安打ともに決勝では過去最多の完敗だが、最後までフルスイングを貫いての準優勝。静岡県勢82年ぶりの優勝には1歩届かなかったが、県高校球界に新たな歴史を刻んだ。
打席に向かう戸狩に、満員札止めとなったスタンドから拍手が送られた。9回2死一塁。戸狩の打球は、投手の前に転がった。一塁へヘッドスライディングも及ばず、逆転常葉学園菊川ナインの夏が終わった。
戸狩が左ひじ痛に耐えていることは、観客の目にも明らかだった。本来は最速141キロの直球は、速くても120キロ台。腕を下げ、痛くないポイントを探しながら懸命に投げた。満塁本塁打を浴びるなど、初回から相手の猛攻を食らった。「腕は振れなかったけど、決勝は歓声も人も多くて、一生の思い出になります」と涙で振り返った。大阪入り後の初練習でひじ痛を発症。人前では「大丈夫です」と繰り返したが、父昌久さん(51)には「顔を洗うのにも痛い」とこぼしたこともあった。
4回から今大会で獅子奮迅の働きを見せてきた野島大介投手(3年)が登板するも、2回2/3で7安打7失点。後続の投手も炎上した。準々決勝の7回から、21イニング連続で安打を浴びた。投手陣を助けたい打線は、散発5安打に抑えられた。公式戦26試合目にして初の完封負け。5試合連続の逆転は果たせなかった。
試合後「いつ負けたっていい。楽しむだけです」と繰り返してきた前田隆一主将(3年)が、涙をこぼした。「笑顔でいようと思ったけど、つらいことと楽しいことを思い出した」。連覇を狙った今春のセンバツでは、重圧に負けて3回戦敗退。4月の春季県大会ではコールド負けを喫し、5月には前監督の不祥事も報道された。「みんなの支えがあったから、ここまで来られた。練習をやっていても身が入らず、何で野球をやっているのか分からない時期もあった」。全国の決勝まで進んだ幸せを感じつつ、仲間と乗り越えてきた苦楽が、涙腺を刺激した。
常葉菊川らしい、思い切りのいいプレーもあった。2回表1死一、二塁、町田が一、二塁間の打球をショートバウンドで押さえ、二塁へ体を反転させながらジャンピングスロー。好守で何度も投手を救ってきたが、またも美技を見せた。7回裏1死一塁、6番上嶋健司一塁手(3年)の一塁内野安打で一塁走者の前田が一気に三進した。「1点ほしかった。アウトになってもいいから行った」。完敗にも、自分たちのスタイルは崩さなかった。どん底からはい上がり、頂点まであと1勝に迫った常葉菊川ナイン。堂々たる準優勝だ。【斎藤直樹】
[2008年8月19日12時14分 紙面から]
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