第82回選抜高校野球(3月21日開幕、甲子園)の出場校が29日、選抜選考委員会で決定し昨秋東北大会王者の秋田商(秋田)が、4年ぶり6度目のセンバツ切符を手にした。就任2年目の太田直監督(30)にとっては初の甲子園となる。140キロ右腕のエース片岡元気(もとき=2年)を中心とした堅守で、4年前の8強超えを目指す。

 発表開始の午後3時が近づくと、普段は冷静な太田監督も落ち着かない。授業中だったが、しきりに腕時計を気にした。同11分、校長室にセンバツ出場の連絡が入ると学校中に、うわさが広まり、太田監督の耳にも入った。「選ばれてホッとした。でも今年のチームは本当に弱い。明日からでも、外でやらせます」とギアチェンジを宣言した。

 昨年11月の明治神宮大会で高岡商(富山)に0-7(8回コールド)で大敗。太田監督は、その際のDVDを車に積み、走行中は音声だけで当時を振り返る。「音だけでも当時の悔しさがよみがえる。あの時どうすれば良かったかを、常に考えて運転している」。来月以降は、分析結果を部員に公表し、ともに課題点を修正していく。

 選手に「弱い」と言い続けるのも、反骨心に期待するからだ。同校で97年夏に甲子園出場、青学大で99年に全日本大学選手権を制した太田監督の言葉に「心にしみます。何くそって感じです」と片岡。西武ドラフト1位の菊池雄星投手(花巻東)の映像を見て、肩やヒジの関節の柔らかさを参考にし、練習の合間にもストレッチを欠かさず、少しでも雄星に近づこうと努力する。

 そんな片岡が言う。「昨年の(4強入りした)花巻東、利府に負けられない」。インフルエンザの影響でベンチ入りメンバーが12人になっても、昨秋東北大会を制したプライドがある。「東北第1代表として4強入りを目指す」とキッパリ。クールな表情とは裏腹に、言葉は熱く煮えたぎっていた。【三須一紀】