前回も紹介したMLBとMLB選手会の間で合意されていた新労使協定。現地13日に批准されたが、その一部内容を12日にAP通信など複数のメディアが報じ、アメリカのみならず日本でも話題となっている。それは新たに盛り込まれた「いじめ禁止」条項についてで、それがMLBの伝統行事ともいえる新人仮装の際の女装にも及ぶというのだ。

 具体的には「選手に女装を強要すること、または人種、性別、国籍、年齢、性的指向、その他の特徴を攻撃するような衣装を強制的に着せることを禁止」という文言があるとされている。

 さらにスポーツ情報サイト、デッドスピンは条項本文を独自入手したとして「選手はそのクラブ・メンバーを卑しめたり、辱めたり、精神的、身体的危害を引き起こすことを意図した精神的、身体的振る舞いの流れに関与するべきでない」「この方針の目的は新人、選手に関してすべての伝統を禁止するというわけではない」「しかし選手に対して身体的な苦悶や危害を与えたり、選手やクラブのスタッフ、ファンに対して攻撃的だったり、クラブやMLBの運営を妨害するような振る舞いを禁止するものだ」と記されているとする記事を掲載した。

 この件についてポール・ミスファド副会長は「実際には起こったわけではないが、誰かが顔を黒く塗って仮装し、『いやいや、ただ仮装しただけだ』と言うことだってある」と、黒人蔑視を例に挙げ、この条項が盛り込まれた意図について説明したということだ。さらに「これについて何人かの選手が不満を述べたことも理解している」と、仮装について選手からも不満が出ていたことを明かしている。

 この新規定について報道が出ると、元選手を中心にSNSでさまざまな意見が投稿される事態となった。元レッドソックスのケビン・ユーキリス氏は「ウソだろ?(セクシーな衣装で有名なレストラン)フーターズの格好でトロントに遠征したよ。それは(MLBの)一員になったという誇りだった」とツイート。元ジャイアンツのオーブリー・ハフ氏も「バカなルールだ。神経質になり過ぎている。仮装はMLBの誇り高い伝統なのに、世の中はあまりに敏感になり過ぎている」と投稿している。どちらかというとこの女装禁止は行き過ぎと捉える人が多いようだ。

 ちなみに全ての仮装が禁止されたわけではなく、スーパーヒーローの仮装などは大丈夫なままということである。