快投で雑音をシャットアウトした。ヤンキース田中将大投手(26)がレイズ戦に先発し、7回を無失点。許した走者は安打の2人のみで、2勝目(1敗)を挙げた。過去2戦は「減速」論争に巻き込まれたが、最速94マイル(約151キロ)のフォーシーム(直球)主体に8三振を奪い、三塁も踏ませなかった。クオリティースタート(QS、6回以上を投げて自責点3以下)を7戦ぶりにクリアし、勝負どころでの「ギアチェンジ」も披露。復調を証明した。

 全球種だけでなく、心のコントロールも抜群だった。2点を先制した直後の6回。田中は先頭に二塁打を浴びても、冷静だった。5回まで両軍無得点の均衡が破れ、試合が動き始めたばかり。想定内のピンチに自然とアクセルを踏み、ギアを上げた。「しまった、という思いはありましたが、切り替えて、絶対ゼロで切り抜けるという気持ちでした」。リベラ、デヘススを連続三振。デヘススの打席では2球が、この日最速の94マイル(約151キロ)に達した。最後はソーザを三ゴロに退けると、思わず声が出た。クールな頭脳と熱い体が、一致した。

 開幕黒星に続き、12日の2戦目は初白星も5回を4失点。昨季途中に故障した右肘を懸念する米メディアは一斉に、「球速減」を論拠に不安説を唱えた。常に結果を求められる立場ではあるが、キャンプからツーシームの応用に取り組んできた田中にすれば、試行錯誤の途上だった。だがこれ以上、不本意な投球を続けるわけにもいかない。「真っすぐ中心でアグレッシブにいけました」。本格派投手の基本とも言えるフォーシームを軸に、けれん味なく腕を振った。右肘故障後では、初めてQSにも到達した。

 過去2戦はふがいない内容だったが、焦りも、マイナス思考もなかった。昨季の故障を受け、キャンプインの時点でヤ軍首脳からはスロー調整を指示された。投球練習は球数、間隔を徹底的に管理され、オープン戦登板は4試合で計14回2/3に限られた。開幕にピークを合わせることは事実上、不可能だった。ただ登板を重ねることで、上昇カーブを描くと、田中自身はイメージできていた。

 見据えるのは、プレーオフ争いの正念場となる8、9月の終盤戦。昨季7月に離脱した反省と悔しさは、今も忘れていない。「やっぱり夏場に強い選手になりたい。去年みたいなことは自分でも嫌なので、そうなれるように頑張りたい」。開幕投手を任された今季。エースの重責を背負う田中が、目先の白星で一喜一憂することはない。【四竈衛】

 ▼田中が今季初のクオリティースタート(QS=先発6回以上、自責点3以下)をマーク。田中のQSは昨年6月28日レッドソックス戦(9回完投、自責点2で敗戦投手)以来、年をまたいで7戦ぶり。肘の負傷が判明した7月以降は初。被安打2は渡米後最少で昨年4月16日カブス戦(8回2安打)以来2度目。