13年ぶりの本拠地開幕戦は沸きに沸いた。広島緒方孝市監督(46)の初陣は、8回裏に2点ビハインドを追いつき延長戦に突入する激闘だ。8回は2死から2四球で粘り、松山が遊撃後方に執念の一打。相手グラブから打球がこぼれ、一気に2者が生還した。超満員3万1332人のマツダスタジアム観衆は興奮の絶頂だった。

 緒方監督の初陣で初勝利とはいかなかった。延長11回。中崎がつかまって2失点。本拠地は超満員3万1332人が駆けつけたが、ファンと一緒に勝利の喜びにはひたれなかった。それでも、ひたむきに勝利を追求する緒方野球は、きっとファンの心をつかんだはずだ。

 2点ビハインドの8回2死走者なしから、派手さはないが勝利への執念を感じさせた。1番天谷、2番菊池が簡単に打ち取られたが、丸とグスマンが四球を選び、2死一、二塁。松山の初球打球もショート後方への力のない飛球となった。しかし、白球は背走して突き出した大引のグラブをかすめて左翼ファウルゾーンへ転がった。スタートを切っていた一塁走者のグスマンまで生還。試合終盤に流れを引き寄せた。

 同点打を放った松山は、昨秋キャンプで緒方監督からカミナリを落とされた。「監督に言われた理由は分かっている。期待されているとプラスに考えたい」。松山は行動で示した。練習に取り組む姿勢が変わり、打撃内容が変わった。秋季キャンプ終盤には、緒方監督からほめ言葉をもらったことでモチベーションとなり、開幕スタメンにつなげた。緒方監督は「最近の若い選手は分からない」と世代格差を感じながらも、選手の心をグッとつかんでいる。指揮官として初めて迎える開幕戦も、気持ちの高ぶりを抑えることはできなかった。試合前練習の大きな円陣で「今日はベンチもみんなで勝つぞ! 頼むぞ! 勝つぞ!」とハッパをかけ、思わず右手はコブシを握っていた。

 今日こそ、初白星をつかんでみせる。そして、緒方監督が昨秋からまいた種はしっかりと、根を張り、芽を出そうとしている。桜前線が訪れた広島に、緒方野球のつぼみが花を開かせようとしている。