DeNAの変則マシンガンが火を噴いた。阪神1回戦で4番筒香嘉智外野手(23)が単打3本でつなぎ役に徹し2打点。6回までに単打10本と二塁打1本の集中打で6点を奪い、単独2位に浮上した。98年優勝など黄金期を支えた「マシンガン打線」をほうふつとさせる攻撃で、貯金を持って開幕10試合を終えるのは00年以来、15年ぶりの進撃。筒香はセ・リーグ打撃部門4冠に立った。

 本塁打は不要だった。DeNAは主砲筒香までが、状況によっては単打でつなぎ役に徹して、得点を積み重ねた。1回は1死一、三塁から、一、二塁間を抜く右前への先制適時打。2回は石川の右前適時打、梶谷の右翼線2点二塁打に続いて、中前に2打席連続の適時打を放った。「こういうふうに、打点を挙げて勝てる試合を増やしていきたい」。試合前まで本塁打だけだった打撃部門1位は、3安打の固め打ちにより打率、打点、出塁率でもトップに立った。

 筒香は常に「ホームランにはこだわっていません。打点を挙げ、チームが勝つことが大事」と言い続けており、その言葉通りの働きだった。「でも最後の打席がダメだったから50点。もっともっと信頼されるバッターになりたい。4番として全試合に出て、チームを引っ張り、優勝するために頑張る」と主将としての自覚も十分だ。

 90年代後半の黄金期は、どこからもつながる「マシンガン打線」が強さの象徴だった。ホームランはなくても単打、二塁打で畳み掛けて大量点を奪うなど、ビッグイニングを生んだ。中畑清監督(61)がよく口にする「状況に応じた打撃」を筒香も実践すれば、当時よりも相手に与える恐怖感は倍増する。

 実は試合前、中畑監督はグランドスラムを渇望していた。甲子園を見渡して「満塁本塁打が2本出たんだよな。うちも欲しいな。1本でいいよ」。センバツで優勝した敦賀気比の松本哲幣外野手(3年)が準決勝で史上初の偉業を成し遂げたことを思い出し、うらやましがった。本塁打はなくても1回は単打2本で1点、2回は単打3本に二塁打1本で4点を奪った。

 中畑節も全開だ。「貯金あるの? 知らなかった。貯金はいいね」とご機嫌。「3、4番で4打点。いい働きをしてくれた。1番が出塁するとビッグイニングになる。理想的な戦いができた。明日が大事になる」と勢いのまま、貯金を積み上げていく。【矢後洋一】

 ▼DeNAは10試合で6勝4敗と貯金2。開幕10試合目に貯金があるのは、権藤監督時代の00年(7勝3敗=貯金4)以来15年ぶり。10試合目以降での貯金は、104試合消化時の07年8月23日以来8年ぶり。大矢監督が率いた同年は最終的に4位だった。