巨人小林誠司捕手(25)が、決勝の2点適時打を放ち、熱戦を制した。同点の延長11回2死満塁で、阪神安藤のスライダーを中前に。試合を決める一打に、普段はクールな男も、ガッツポーズで喜びを表現した。17日の阪神戦で主にスタメンマスクを担ってきた阿部が負傷。攻守の大黒柱不在に、奮起を期待される男が意地を見せた。

 聖地・甲子園のダイヤモンド上で、小林は力強く手をたたき、拳を握った。同点の延長11回2死満塁、試合を決める勝ち越しの2点適時打に、興奮と喜びが交差した。打席の直前、川相ヘッドコーチから「ベースに近づいて、(ストライク)ゾーンを上げて、高めを打っていけ」と耳打ちでアドバイスされた。1-1からのスライダーを「食らいついて」中前に運んだ。

 開幕から、山あり谷ありだった。阿部が一塁に転向する中、競争を勝ち抜いて、開幕戦に出場。2カードを終え、4試合に先発したものの、相川の負傷、チーム状況から7戦目で阿部が捕手に戻った。ベンチから戦況を見守る日々。「悔しかった」と言いながら、「課題もやることもたくさん。この経験を生かさないと、先はないです」と受け止めた。

 小林 簡単にレギュラーを取れるとは思ってないです。努力して、自分の力で勝ち取るもの。

 気持ちを新たにする中、阿部の負傷で再び出場機会が訪れた。17日の同戦は途中出場で勝利に貢献。この日が阿部の離脱後、初のスタメン出場だった。

 この日は降雨の影響で室内練習場で試合前練習が行われた。室内からロッカールームに戻る道中。ふと、ある通路が目に入った。甲子園大会中、選手がグラウンドから引き揚げる場所だった。「僕の翌年から新しくなったんですよ。やっぱり、ここは特別なところ」。広陵3年夏に広島野村とのバッテリーで準優勝を成し遂げた。“聖地”が元球児の心を刺激した。

 「阿部さんがいなくなって、チームが弱くなったと言われないように」。試合前の道中、そして、お立ち台でも同じ言葉を発した。2安打2打点も守備に課題を残した。それでも、迷いは吹っ切った。「1試合1試合準備してやるだけ」。課題も収穫も全て、自分の力に変える。【久保賢吾】

 ▼小林が延長11回2死満塁から勝ち越し打。小林のV打は昨年4月18日中日戦以来2度目で、前回も満塁からの適時打。満塁での結果を出すと、14年が右安、左2、二ゴ、右2、遊ゴ、左安、今年が中安と通算7打数5安打、打率7割1分4厘の9打点。プロ通算打率2割5分、16打点の小林だが、満塁では抜群の勝負強さを見せている。