大逆転勝利だ! 日本ハムが広島戦で2点を追う9回に一挙5点を奪って3連勝を飾った。相手投手の乱調につけ込み、近藤の適時打と谷口の押し出し四球で同点。続く岡の2点適時二塁打で勝ち越した。敗色ムード濃厚の不利な形勢から試合をひっくり返し、貯金は今季初めて2ケタの10に到達。首位をしっかりキープした。

 頼もしいイケメンたちが、野太い声で叫び続けた。「カープ女子」の悲鳴のボルテージが上がっていく。2点を追う最終9回。栗山英樹監督(54)は予感していた。「最後まで諦めない空気がベンチにあった」。ポジティブすぎる、ひらめきが大当たりだ。ラッキーボーイになった谷口の押し出し四球で同点。なお1死満塁で、途中出場の岡が決めた。「消極的にならないように」。広島戸田の初球の直球を捉えた。決勝の2点二塁打。この回一挙5点。真っ赤に染まった敵地が静まる。逆転劇を完成させた。

 節目の白星をドラマチックに、つかんだ。今季最多の貯金10。栗山監督の就任1年目。リーグ制覇を果たした12年以来、3年ぶりに2ケタへ到達した。1つのラインに設定していた。「知らん顔していたけれど…。まずは2ケタというのをテーマにしてきた。これから次へ、必死に向かっていきたい」。広島のエース前田を攻略できず、我慢比べで突入した終盤。8回に谷口がプロ初の代打本塁打など、台頭する若手がシンクロして土壇場で制した。

 粗削りなホープたちを束ねる、キーマンがいる。9回。先頭打者で四球を選んだ。突破口を切り開いたのは、今季3年ぶりにカムバックした田中。5月13日西武戦。スイング後にバットがうまく振り抜けず、激痛が走った。右肩が抜けたような感覚に陥った。「(一塁へ)走りながら少し肩に、はまってくれたので、まだ良かった」。翌日から「右肩の違和感」との理由で、大事をとって欠場した。実情は軽症ではなく、不完全な脱臼とされる「亜脱臼」とみられる。その後はベンチで代打待機はしていたが、出場不能だった。

 戦列に戻ったのは34歳の誕生日、20日楽天戦。出場を5試合見送り、静養などで改善を図った。いまだ全力での送球は難しい状態。右腕でユニホームをつかんで、負傷部分を固定しながらプレーを続ける。プライドを捨て、不本意な走法での全力疾走。この日のようにDH制のないセ本拠地では二塁で強行出場も、守備機会は極力、避けながらの見切り発車。再発の不安が高まる、走塁が一番の恐怖。「一番、怖い」。現状で最高のパフォーマンスで、献身的にグラウンドに立つ。

 大きな背中に奮い立つ。芽吹き始めたニューフェースたちがこの日も、つながっていった。栗山監督は「(田中)賢介が試合の流れを読んで四球を取ったりとか、よくやってくれるよね」と最敬礼。快勝のスパイスになった。田中は、静かにうなずいた。「今日の勝ちは大きい」。世代交代とされる今季。勝者のDNAを持つ優勝請負人を中心に広がる強固な和で、首位をひた走る。【高山通史】

 ▼日本ハムが広島に勝ち、12年以来3年ぶり、今季初めて貯金10に到達した。貯金10に到達したシーズンは過去18度あるが、最終順位はすべて3位以上。62、81、06、07、09、12年は優勝している。