完敗し、借金生活に戻ってもヤクルトは勝率2毛差で首位を守った。頭をよぎった「一日天下」。プロ野球史上初の「珍事」を知る前に球場を離れた真中満監督(44)は、「(順位は)本当に気にせずに1試合、1試合粘り強くやっていくだけ」と冷静さを貫いた。

 前日2日に、4月29日以来の首位を奪取した。4連勝で広島に乗り込んだが、チームの勢いは先発古野に伝わらなかった。自身も4連勝中のはずが、初回に3個の四球で塁を埋め、さらに4安打を集められていきなりの5失点。「打者と勝負する以前の問題。チームに迷惑をかけて申し訳ない気持ちだけです」と今季初黒星にうなだれた。これでは野手も広島前田相手では戦意をそがれるばかりで、手元で鋭く曲がるスライダーと140キロ台後半の直球に手を焼いた。川端は「足をゆっくり上げたり、ワインドアップになったりでタイミングを狂わされた」とお手上げだった。

 それでも真中監督は勝敗ごとに一喜一憂しない。昨季まで2年連続の最下位に沈んだだけに、「これだけ混戦だったらうちにもチャンスはあるかもね。でも目の前の試合に1つずつ勝つことから。順位は全て終わってから」と話した。しぶとくペナント争いにしがみつき、最後に笑うつもりだ。【栗田尚樹】

 ◆最低勝率優勝メモ メジャーでは73年メッツが82勝79敗でレギュラーシーズンを終え、プレーオフでレッズを倒してリーグV。この勝率5割9厘がメジャー史上最低の優勝勝率。地区優勝に関しては、05年パドレスが82勝80敗でナ・リーグ西地区V。ただ地区シリーズでカージナルスに3戦全敗し、公式戦と合わせると借金1で、地区優勝チームが年間勝率5割を切ったのはこれが唯一のケース。また94年はストライキのためシーズンが8月11日で終了しており、ア・リーグ西地区のレンジャーズは52勝62敗の借金10ながら地区1位だった。