弔い星を、宮脇さんに。広島のエース前田健太投手(27)が今日10日の中日戦に先発する。前日8日に63歳で死去した寮長の宮脇敏氏にはマエケンも2軍時代によく声を掛けてもらった。昨季試合で使っていたグラブをプレゼントしたこともある。前半戦5割ターンのためにも、負けられない戦いに挑む。

 9日午前11時からの練習前だった。首脳陣、選手、スタッフがセンター付近に集まった。約1分間、前日8日に63歳で死去した宮脇敏氏に黙とうを捧げた。蒸し暑いマツダスタジアムを静寂が包む。寮長としてマネジャーとして、陰から支えてくれた。エース前田も感謝する1人だった。忘れられない思い出とともに、故人を悼んだ。

 「僕が2軍にいたころはマネジャーだったのかな。よく練習終わりとかトレーニング室でも声を掛けてもらっていた。最近は僕のグラブがほしいと言ってくれて。去年の試合で使っていたグラブをプレゼントしました。サインを書いて、渡しました」

 前日8日、三次でのDeNA戦では大敗を喫した。弔い星を挙げるのは、他の誰でもないエースの役割だ。今日10日の中日戦で敵地に乗り込み、8勝目を狙う。「いろいろお世話になった選手もたくさんいると思う。頑張っていきたい。優勝も長らくしていないし、喜んでもらえればと思います」。マウンドに上がれば無心で腕を振るだけだが、思いは強い。

 チームにとっても大事なカード初戦になる。連敗し現在の借金は3。緒方監督が目標としていた「5割ターン」を達成するには残り5試合を4勝1敗でいく必要がある。「こういうときに回ってきたので、しっかりいい流れに持ってこれるようにしたい。それが仕事。前半戦で借金が無くなるようにしたい」。勝つこと以外、頭にない。

 前日8日には故障で黒田が出場選手登録を抹消された。ルーキー薮田も不安定な投球で、ローテの6番目は穴が空いている。緒方監督はこの日、ウエスタン・リーグ阪神戦に先発した中村恭のチェックで由宇を電撃視察。だが6回3失点と精彩を欠いた。「また考える。収穫は薄かった」と指揮官。可能性として先発陣が空席の15日阪神戦に、前田が中4日で先発することも考えられる。右肩にのしかかる大きな期待。だが、必ず結果で応えてくれるはずだ。【池本泰尚】