鳥谷も、藤浪と森が繰り広げた通天閣打球に口をあんぐりだった。全セの2番遊撃で先発した阪神鳥谷敬内野手(34)は、4打数2安打1打点と活躍。1点ビハインドの5回無死二塁では初球をフルスイングし、右翼フェンス手前の大飛球で沸かせた。4年連続6度目の宴で、きっちり仕事人ぶりを発揮。大混戦の後半戦へ活力を得た。

 鳥谷はファンのような目線で、打球の行く末を追っていた。遊撃から見たのは後輩藤浪が生んだ名シーン。6回、藤浪の全力投球にフルスイングで応えた森が、天井に白球をぶつけた。まさかの出来事に「全然(打球の場所が)関係なかったので見ていました。東京ドームでは初めて見ましたよ」と目を見開く。1球も気が抜けないシーズンとは少し違った、球宴ならではの興奮だった。

 「オールスターですし、どんどん振っていこうと思った。ヒットも出たし、打点も挙げられて良かったです」

 それでも働きぶりは「阪神鳥谷」のままだった。2点リードの6回2死一、二塁。ロッテ涌井の内角低め137キロに一瞬で肘をたたむ。鳥谷らしい無駄のない動きは、打球を右前に導いた。右前適時打で4打席目を終えると、代走を送られお役御免。3回には足を生かした遊撃内野安打で追加点を導き、5回にも本塁打かと思われた右翼フェンス手前への飛球で存在感を示した。ベンチに戻ると、色とりどりのユニホームからねぎらいを受け、自然と笑顔になった。

 「このチームで、シーズンでもやりたいなと思いました。優勝するでしょうね(笑い)」

 阪神からは野手で唯一の参加。ベンチは他チームばかりだが、4年連続6度目の出場で雰囲気も慣れたものだ。試合前練習では昨年までのチームメート、広島新井に歩み寄った。言葉を交わしながらキャッチボールをし、ティー打撃ではトスを上げた。昨年までの日常も、今となっては特別な時間だ。「阪神にいたときからトスを投げることはありましたよ」と懐かしみながら交流を楽しんだ。

 対戦を待ち望んでいた日本ハム大谷には初回、4球の直球で一ゴロに倒れた。それでも「球も速いですし、対戦できて良かったです」と充実感が残った。最高のチームメートに、最高の相手。大舞台で見せた実力とリフレッシュ効果は、きっと後半戦の活力になる。【松本航】