球団史上4人目の大台到達だ。日本ハム増井浩俊投手(31)が楽天22回戦で自身初の30セーブ目を挙げた。2点リードの9回、2安打を浴びたが無失点で切り抜けた。リーグ最速の30セーブ目で、球団では江夏豊、マイケル中村、武田久に次ぐ大台に到達。初のタイトル奪取へ、守護神の勢いは止まらない。

 小雨が舞う仙台で、小さく胸の前に右拳を突き上げた。淡々と投げ込んできた増井が、1つの目標に到達した。2点リードの最終9回2死一、三塁。プロ初打席の楽天北川を空振り三振に打ち取った。チームを今季9度目の3連勝に導くリーグトップの30セーブ目。プロ6年目、守護神として2年目で初めて大台にたどり着いた。「目指していたところなのでホッとしました」。厳しい職場で仕事を果たし続ける右腕が、柔和な表情で、ひと息ついた。

 ストッパーとして、ぶれない信念がある。「まずは追いつかれないこと。追いつかれても、追い越されないこと」。この日も慌てなかった。1死からペーニャに内野安打を浴び、2死二塁からは岩崎に中前打。1発を許せば逆転サヨナラ負けのピンチにも動じない。「1人1人、自分の投球をすれば結果は付いてくる」。150キロ超えの直球にフォーク、スライダーを駆使。いつも通り、任された役割を完遂した。

 圧倒的な安定感の源は、赤っ恥体験だった。「今季の初失点が満塁からのボークでしたから」。開幕6戦目の4月2日ロッテ戦(QVCマリン)。幾多の修羅場を経験した守護神が、思わぬ失態を演じた。4点リードの9回2死満塁。点差はあったが、連打を浴びて招いたピンチに冷静さを欠いた。ボークを取られた理由は三塁への偽投。昨季から適用されているルール改正を、ど忘れしていた。

 脂汗が、にじみ出た。「そうだ、ダメだった」。単なるうっかりミスにマウンド上で赤面。試合は逃げ切ったが、周囲が冷やかす視線からは逃れられなかった。「(兼任コーチの)中嶋さんからは『何してんだ』と言われたりして…」。言い訳も出来ない単純ミスはこらえたが、恥をかいて、たくましさを増した。「これ以上、恥ずかしいことはないし、怖いものもない」。究極の開き直りが、不動心へと変貌した。

 前夜の西武戦後。球場からの帰り際に栗山監督から最高の発奮材料をもらった。「酷使しているし、疲れが出ているのは分かる。増井でやられたら何も文句はない」と、語りかけられた。コツコツ積み上げた努力で、絶対の信頼を勝ち取った。「しんどいのはあるけど、できる限りのパフォーマンスをする」。細身の守護神は、淡々と試合を締め続ける。【木下大輔】

 ▼日本ハム増井が自身初の30セーブ(S)に到達した。球団の30S以上は、31Sをマークした13年武田久以来、2年ぶり。球団史上4人目、のべ8度目。もともと公式記録となったのが74年からで、球団では83年江夏豊(34S)が最初で、マイケル中村が06年の球団最多39Sを含む2度。武田久が4度到達している。