去就が注目されていた中日岩瀬仁紀投手(40)が15日、現役続行の意思を固めたことが分かった。通算402セーブ左腕に対し球団は契約の意向を示していたが、本人は今季登板なしの原因となった肘の状態を考えて悩んでいた。推定年俸3億円からの大減俸ものむ覚悟で、春のキャンプまでに完治させるリミットを設定。41歳で迎えるプロ18年目は退路を断って勝負に出る。

 現役続行を決めた左腕の覚悟は生半可ではなかった。今季は春季キャンプから左肘痛に苦しみ、現時点で1軍はおろか、2軍でも登板がない。最近ようやく再開したブルペン投球も捕手を立たせた軽いものにとどまっている。プロ17年目で初の実戦登板ゼロで終わる可能性が高い。それでも「このままでは終われない」と来季に向けた決意を口にした。

 大減俸を受け入れる覚悟だ。球団は契約を結ぶ意向を示してきたが、1年間登板のない41歳投手は推定年俸3億円からの大幅な減俸は避けられない。野球協約で定められる限度額は40%、約1億2000万円減ながら岩瀬は「それは切るでしょ。1億円? そりゃ切るでしょ。今までのことを見ていれば」とサラリ。「でもそこじゃないから」と金額や待遇ではなく、プライドをかけた決断であることを強調した。

 さらに厳しい覚悟を示した。来季の復活へ、期限を設けていることを明かした。「そこまでには結果が出てるでしょ。投げられなければやめるでしょうし…」。岩瀬が「そこまで」と語ったのは来春キャンプ。2月の沖縄キャンプを終えても投球できない状態が続けば、きっぱりとユニホームに別れを告げる。歴代最多の通算402セーブを誇る名ストッパーがいばらの道を選んだ。

 「僕の中ではすごく簡単なこと。これまでとやることは変わらない」。今はこれまでと変わらず2軍の練習に参加し、治療も続けている。オフには例年通り鳥取のトレーニングジム「ワールドウィング」で調整を重ねる予定だ。

 谷繁兼任監督、和田、小笠原と今季限りの引退を決めたベテラン勢が多いチームで、鉄腕は奮い立った。今季は若手のリリーフ陣が打ち込まれる場面も目立った。苦しんだ必勝リレーの立て直しを図るため、球団も復活を期待している。岩瀬が勝負のプロ18年目に向かう。【桝井聡】

 ◆岩瀬仁紀(いわせ・ひとき)1974年(昭49)11月10日、愛知県生まれ。西尾東から愛知大、NTT東海(当時)を経て98年ドラフト2位で中日入団。1年目から中継ぎで65試合、10勝と優勝に貢献。最優秀中継ぎ投手賞を3度獲得。04年から抑えに転向。最多セーブ5度で、05年の46セーブはプロ野球タイ記録。昨年7月に史上初の通算400セーブを達成。99~13年まで15年連続で50試合に登板。181センチ、85キロ。左投げ左打ち。