「ドラフト1位対決」は駒大の左腕に軍配が上がった。DeNA1位の駒大(1部6位)・今永昇太投手(4年=北筑)が今年の公式戦初勝利を初完投完封で飾った。最速は146キロ。150球を投げ3安打12三振を奪い、ヤクルト1位の東洋大(2部1位)・原樹理投手(4年=東洋大姫路)に投げ勝った。今永は今年、左肩の腱板(けんばん)炎症で苦しんだが、大事な試合でエースの役目を果たした。

 気合、気迫。今永は出せるものすべてをマウンドで表した。相手もドラフト1位の東洋大・原。「もう、つぶれたら、つぶれたでいい。後ろにいいピッチャーがいる」。初回から直球で押し、三振の山を築いた。左腕をしならせ、打ち取る度に雄たけびをあげた。今季0勝3敗の左腕が、三塁を踏ませない好投で3安打12三振を奪った。

 ナイター照明の中で、エースの意地とプライドがぶつかりあった。普段から携帯のLINEで連絡を取り合う原との投げ合いは、7回までゼロ行進。両雄譲れない闘いだった。試合が動いたのは8回。1死一、三塁で駒大・米満一聖内野手(2年)がスクイズを決めた。あとは抑えるだけ。「今季は下級生に責任を負わせてしまった。僕に任せろと思った」。福岡から駆け付けた両親が見守る前で、150球を投げ抜いた。

 原点回帰だった。左肩の腱板(けんばん)炎症で今春は全休。秋は2試合先発し22回2/3を投げたが自責5。1勝もできなかった。「入れ替え戦の先発を言われた後、自分に力がなかったことを理解して一から投げ込み、走り込みをしました」。約2週間ほぼ休まず、多い時は150~200球を投げ込んだ。13年秋の入れ替え戦では東洋大相手に1回戦で3-0完封した。「2年前、残留して人生が変わった。今度は4年生になった僕が、周りの人の人生を変えたかった」。

 今季はふがいない投球が続き、一時はプロ志望届を提出するかを本気で悩んだ。それだけに、ドラフト1位指名され、周囲への感謝が募る。連勝すれば1部残留が決定。「ドラフトも終わり、モヤモヤが取れたというか。監督には3連投もあると言われています。原も3連投でしょうし僕もそのつもりでいきます」。今日も左腕を振る覚悟はできている。【和田美保】