どん底から切り開いた。巨人堂上剛裕外野手(30)が27日、東京・大手町の球団事務所で契約更改交渉を行い、1000万円アップの推定2500万円でサインした。昨オフ中日を戦力外となり、トライアウトを経て巨人のテストを受験。育成から支配下契約を勝ち取った。「1日1日を鮮明に覚えている」と必死を貫き、59試合に出場し3本塁打。背番号は、愛工大名電高の大先輩・イチローの代名詞「51」に変更となった。「より頑張ろうと思った」と泥くさく歩を進める。

 1年前とは雲泥の差があった。堂上は晴れやかに会見のひな壇に上がった。野球をあきらめなければならない窮地から、裸一貫で勝ち取った2500万円。「1年間戦い抜く。それだけだった。来季の期待を含めてだと思う」。球団からは「練習、試合中の準備が、一番印象に残った」とハングリー精神を認められた。

 濃密な日々だった。キャンプでアピールに成功し、2月23日に支配下登録。涙の会見から5日後のオープン戦で、1回の守備時に右手親指を骨折した。「骨折だ」とすぐ分かったが、「今日を乗り切れば何とかなる」と周囲を制して打席へ。原前監督を「その根性はすごいね!」と驚かせた。新背番号は「難しいですね…」とくすぐったそう。来季へは「体を鍛え直す。すべてをぶつける」と勇ましく言った。高橋監督が引退してぽっかり空いた、左打ち強打者の穴。野球少年を貫く堂上が埋めてみせる。【宮下敬至】