猛虎発の侍捕手を! 阪神矢野燿大作戦兼バッテリーコーチ(46)が29日、「39ベースボールプロジェクト」(タツミコーポレーション特別協賛)で神戸市内に出向き、野球少年を熱心に指導した。11月の国際大会「プレミア12」では侍ジャパンのバッテリーコーチを務めたが、メンバー28人のうち阪神選手はゼロ。来季からは自らの手で侍戦士級となる虎の正捕手を育て上げる。

 日の丸を背負う重圧、そして喜び…。「侍」という肩書がどれだけ選手を成長させられるのか、身をもって知っている。矢野コーチは16年、世界に通用する捕手の育成に尽力する。

 「ああいう試合はなかなか経験できない。(代表戦は)精神的にも肉体的にもしんどいから。今後、タイガースの選手がどんどん呼ばれるようにピッチャー、キャッチャーを育てたい」

 13年秋から侍ジャパンのバッテリーコーチを務める。11月の国際大会「プレミア12」でも指導。同大会は準決勝で韓国に敗れたものの、3位に食い込んだ。ただ、日本中を沸かせたメンバー28人の中に虎戦士は1人もいなかった。

 唯一選出されていた藤浪が右肩炎症で出場辞退を余儀なくされ、切ない状況が生まれた。いち阪神OBとしては「寂しい部分もあった」。自身も08年北京五輪で世界と戦った経験がある。特に捕手は国際大会で得る財産が多いと考えるから、期待も大きくなる。

 「シーズンでも取り返せない1球はあるけど、代表ではそういう意識がより大きくなる。こういうボールは外国人選手に通用しない、とかも分かる。コミュニケーションにしても、どうすれば短期間で集まった投手と、となる。審判とか球場とか風とか、研ぎ澄ませることが大事になる。それが当たり前になれば、シーズンに生きるからね」

 17年WBCへチャンスは十分だ。「プレミア12」には楽天嶋、西武炭谷、ヤクルト中村が出場。絶対的正捕手は生まれていない。今季捕手で規定打席数に到達した炭谷、中村が代表入りした事実を見ても、阪神で不動の正捕手を勝ち取れば侍への道がに開けるはずだ。

 「(候補は)梅野だけだとは思っていない。まずチームのレギュラーになって、1年間守れる捕手にならないと呼ばれない。結局は勝ち残らないとダメ」

 矢野コーチの正捕手像は「守れることが前提にある」。中堅捕手にも門戸は開かれている。虎の先発マスクを奪い取り、侍ジャパンに殴り込め! 熱き号令に導かれ、正捕手争いのゴングが鳴る。【佐井陽介】