「ハマの金剛力士像」こと、DeNAのドラフト4位戸柱恭孝捕手(25=NTT西日本)が鮮烈デビュー弾で、アレックス・ラミレス監督(41)に“初陣白星”を贈った。13日、ヤクルトとの練習試合で先発マスクに抜てきされると、5回に12球団ルーキーでは実戦1号一番乗りとなる、右翼席へ同点2ランを放った。リード面を含め、横一線の正捕手争いでも好アピールに成功した。

 金剛力士像の頬が緩んだ。2点を追う5回2死三塁、戸柱が引き締まった表情で打席に入った。口を真一文字に結び、昨季のセ・リーグ王者に胸を突き出す。カウント1-1からの3球目。ヤクルト久古の真ん中に甘く入った120キロスライダーを思い切り振り抜いた。「全然、覚えてない。1球1球、必死に食らいついた。びっくりしました」。浦添の空に舞った打球は、きれいな放物線を描いて右翼席に飛び込んだ。

 驚きを隠せぬまま、本塁に生還すると三塁走者のロマックに出迎えられた。「自然と笑顔が出てしまいました」と一瞬だけ表情が崩れた。ベンチのラミレス監督、ナインに手荒い祝福を受けると、喜びと興奮で一気に表情が崩れた。「怒っているわけじゃないんです。もともと、こういう顔なので。なかなか笑えないんです」と普段からどことなくこわもてで通してきたルーキー捕手が、照れながら頭をかいた。

 ラミレス監督にとっても大きな収穫だった。“初陣”を鮮やかな逆転勝利で飾り、「初めての試合にしてはいい出来」と両手からVサインも飛び出した。偶数回ではベンチから配球のサインを送り、奇数回は捕手にリードを任せた。「内角高めもうまく使えていたし、練習でやっていることを試合で表現できた」と納得顔で振り返った。宜野湾キャンプ中の早朝散歩ではジョーク交じりに、「寝ようとしたら戸柱の顔が出てきた。ナイトメア(悪夢)だったよ」と話題に挙げていた期待の新人が攻守で大活躍。「今まで見たことのないスマイルを見せてくれた。今日の夢にも出るかもしれないね」と称賛した。

 正捕手を争うルーキーが、ラミレスDeNAの勝利至上主義の徹底をグラウンドで体現。戸柱は「期待されているのはありがたいことですが、今日はまだ1試合だけ。立ち上がりに失点をしているし、同じ打者に同じようなヒットを打たれている。反省点は多いです」と再び表情を引き締めた。扇の要は一喜一憂せずに、謙虚にどっしりと座る。【為田聡史】

 ◆DeNA正捕手争い ラミレス監督は開幕後のベンチ入りメンバーを「捕手2人体制」にすることを構想に掲げる。そのための条件として正捕手の確立が急務だ。昨季は3選手が出場を分けた。嶺井が最多の74試合、続いて高城が64試合、黒羽根が63試合だった。今季は3捕手に加え、ドラフト4位戸柱が争いに加わった。光山バッテリーコーチは「これだけ横一線というのは珍しいぐらい」と説明。また昨季は、暴投数が12球団ワーストで90年ロッテのプロ野球ワースト記録に並ぶ68とバッテリーミスが目立った。