キャプテンの一打が、巨人打線をよみがえらせた。坂本勇人内野手(27)が2-2の同点に追いついた直後の7回2死一、三塁で、右中間に勝ち越しの2点適時二塁打。停滞していた打線を活気づかせ、今季最多の1イニング6得点の猛攻に導いた。下半身に痛みを抱えながらも、11試合連続安打をマーク。チームは単独首位に浮上した。

 なりふり構わず、ボールに食らいついた。坂本は7回2死一、三塁で、中日又吉の外角スライダーに腕を伸ばした。下半身の痛みをこらえ、足を引きずりながらも二塁に到達。右中間への決勝適時二塁打で2点を勝ち越すと、代走を送られた。主将の懸命な一打に後続も続き、一挙6得点で試合を決した。坂本は「とにかく1本という気持ちでした」と振り返った。

 開幕ダッシュに成功したチームが引き分けを挟んで2連敗。この試合前まで24イニング適時打がない打線の沈滞が、大きな要因になっていた。坂本は「この1週間は打線が引っ張れなくて、投手に迷惑を掛けていた」と責任を感じていた。 主将としてできることはなにか。チーム状況が悪くても、明るい雰囲気をつくろうとしてきた。侍ジャパンで日本代表入りした際、ソフトバンク松田が常に明るく声を張り上げている姿に驚いた。「底抜けに明るい。選手としてもチームを盛り上げる力はすごい。盛り上がると雰囲気が違う」。巨人では後輩の吉川が、ベンチで大きな声を出して盛り上げている。開幕前、「このままやってくれ。いきすぎたら注意するから」と託していた。

 だからこそ、連敗中でも吉川に続いて声を出し続けた。試合前には、野手陣に「今日は打者で点を取って勝とう」と声を掛けた。下半身に違和感を抱え、全力で走れず足を引きずることもある。それでも「大丈夫です」と弱音を吐かなかった。これまでチームをけん引してきた阿部も内海も2軍で調整中。チームが悲観的にならないよう、チームを鼓舞し続けてきた。

 連敗ストップで単独首位浮上に貢献した主将に、高橋監督は「よくチャンスを生かしてくれた」と褒めつつ「こちらが求めているのはもっと上のレベル。もっと頑張ってほしい」と求めた。期待の高さは、坂本も承知している。「もっと投手を楽にしてあげられるように頑張りたい」と頼もしかった。【浜本卓也】