覚せい剤取締法違反の罪に問われた元プロ野球選手清原和博被告(48)の初公判が17日、東京地裁で行われた。弁護側の情状証人として、野球解説者の佐々木主浩氏が出廷した。清原被告とは30年来の「親友」と言う同氏は、証人の申し出を即決したと明かした。薬に溺れた「スーパースター」の同学年に「2回目はないと信じている」と語りかけ、再起を促した。

 佐々木氏は東京地裁425号法廷の最後尾に用意されたパイプいすに座り、清原被告の裁判を最初から見届けた。証言台に立つと、向かって左に被告の姿があった。朝に電話で「ごめんな」「気にしないでくれ」とやりとりしていた。被告は何度か目線を送り、涙をこらえていた。佐々木氏は裁判官に言われたとおり、真っすぐ前を見て、落ち着いて問い掛けに応じた。

 弁護人からの主尋問。出会いを「30年くらい前。高校3年の国体で写真を撮らせてもらった」と明かした。明るく応じてくれた「スーパースター」と打ち解け、「野球界で何でも打ち明けられる友達」になった。「本当に優しくて気が利く。食事の後『今日はありがとうね』と、ニコニコしながら言ってくれる姿が好きだった」。被告の顔がみるみるゆがむ。目を真っ赤にして泣いた。

 14年12月、自身の殿堂入りパーティーに呼んだ。被告は「迷惑を掛ける」と断ったが「いないと成り立たない」と出席を頼んだ。今年1月の名球会イベントで、子どもたちと楽しそうに触れ合う姿に安心していた。週刊誌の薬物疑惑報道にも「彼を信じていた」。だから逮捕は「裏切られたと思い、ショックでした」。しかし、証人の申し出は「親友と思っているから即決した。周囲の反対はありましたが、親友のために」と強調した。「2回目はないと、僕は信じています」と訴え、検察側の反対尋問に入った。

 親友であれば、道を外した被告を、引き戻せたはず-。「様子の変化に気付かなかったのか」「野球で何ができるのか」「更生できるのか」。厳しい質問が出た。佐々木氏は「私の前ではいつも通りでした。これからの行動で示すしかない。野球をやらせるのが一番」と答えた。裁判官には「少しでもできることはなかったのか。反省しています。(薬物を)やっていないか聞いたとき『やっていない』と言っていた。今後、彼は僕にうそをつかないと、信じていたい」と結んだ。

 引き揚げ際、2人は言葉を交わし、右手で強く握手した。「判決が出たら、いろいろ。顔を見て話します。友達だから」と佐々木氏。大きな手を差し伸べた。清原被告は、もう裏切れない。