やっと勝てた。ロッテ涌井秀章投手(30)が巨人打線を9回4安打1失点に封じ込め、今季6勝目を手にした。5月以降、安定した投球を続けながらも勝ち星に恵まれなかったが、7試合ぶりの勝利。菅野智之投手(26)とのエース対決を制し、チームを今季初の6連勝に導いた。

 長いトンネルを抜けた。9回2死、巨人坂本の打ち上げた打球が清田のミットに収まっても、涌井の表情は変わらなかった。「ファウルかな、と思ったらレフトスタンドが沸いてた。ああ、アウトなんだなと思いました」。ひょうひょうとした言葉の中に、安堵(あんど)を織り交ぜた。

 49日ぶりの勝利だ。3、4月は5勝無敗で月間MVP。5月に入ってから援護に恵まれなかった。直近5試合は、いずれも7回以上を自責点2以内に抑えながら3敗。気付けば昨年10月に1軍デビューしたばかりの二木にも勝ち星で追いつかれた。7日からの本拠地6連戦は1勝5敗で、伊東監督に言われた。「お前だけだからな、先週勝ってないの」。一番こたえた。

 前回登板の翌日。「バッティングの間、走ってます」と黙々と走るエースの姿があった。普段は登板3、4日後に行うウエートもした。涌井は実績と練習への取り組みから、チームで唯一、登板間の調整を任されている。ルーティンを確立している男が、いつも以上に追い込んだ。楠トレーニングコーチが「やり過ぎないよう、こっちがストップをかけないといけない」と思いやるほどだった。

 内に闘志を秘め、角中が勝ち越しソロを放った6回以降、1人の走者も許さなかった。「アイツには(前日までの)名古屋で焼き肉ごちそうしたんで。そのお返しがきましたね」。感謝の表現も涌井節だったが、6回で降板した相手エース菅野に対し、終盤も140キロ台後半で押した。無四球の123球。中継ぎ陣を休ませ、今季3度目の完投で初めて白星を手にした。

 チームはいずれも先発投手に勝ちがついて今季初の6連勝。ソフトバンクが阪神に敗れ、交流戦最高勝率への望みもつないだ。伊東監督は「今日はワクに勝ちがついたことが大きい」と言った。涌井自身、交流戦勝利も2年ぶり。「最終登板で勝って良かった。久しぶりにいい1週間が過ごせそうです」。再び始まるペナントレースを前に、エースのエンジンが暖まった。【鎌田良美】

 ▼涌井が西武時代の11年6月1日以来、5年ぶりに巨人戦で勝利。前回も完投勝ちだった。これで交流戦の完投は通算13度目。ダルビッシュ(現レンジャーズ)杉内(巨人)の各12度を上回る最多となった。交流戦通算勝利は23勝となり、歴代単独3位に浮上。