負けるより、普通に、逆転勝ちがいい。ナガノで止めた重苦しい連敗。8回に逆転してなおも2死一、三塁で、ドラフト1位高山俊外野手(23)が会心の左前適時打を放った。7試合ぶり先発起用に6月10日の日本ハム戦以来となる3安打猛打賞で満点回答。6月3日西武戦の4回裏以来となる「1イニング3点目」をたたき出したルーキーに金本監督も目を細めた。

 高山の一打で試合が決した。8回。逆転に成功し、なおも2死一、三塁。1ストライクからヤクルトの左腕村中の外角スライダーを振り抜いた。ライナー性の打球は、ショートの頭を越え左前に弾む。復活を印象づけるこの日3本目の安打で、女神をぐっと振り向かせた。

 「もう1点というところだったので、1本出て良かったです。スタメンから外れる機会が多くなって、悔しい思いをしたのでこの先発の機会で結果を出したかった。打ちたい気持ちでした」

 3日中日戦以来、7試合ぶりのスタメン復帰で今季6度目の猛打賞。鬱憤(うっぷん)を晴らす大暴れだった。開幕から勢いよくレギュラーの座を奪ったが、次第にプロの厳しい内角攻めに苦しんだ。6月の月間打率は2割1分7厘と低迷。快音を鳴らしていたフリー打撃でも、ケージの上部に打球を何度も当てることがあった。打開すべく、5日からの東京ドームでの巨人3連戦では早出で素振りし、試合後にも素振り。前日11日には指名練習に参加して打ち込むなど、バットを振り込んできた。努力を重ねたルーキーのお目覚めに、指導を続けてきた金本監督も「上体のぶれがなくなってきている。後はタイミングだけ。あおり打ちというか、矯正してこれからいいものが出てくればね」と目を細める。

 背番号9の努力する力は中学時代に育まれた。船橋中央シニア時代、高山はホームランにこだわり「打球を上げたい、飛ばしたい、ホームランを打ちたい」とコーチに訴えた。それでも指導陣は「高校生になれば勝手に飛ぶようになる。それが将来のお前のためになる」と言い続け、ひたすらライナー性の打球を飛ばす練習を繰り返させた。黙々と練習に励み、今の姿を身につけた。下地があるからこそ、壁にぶつかっても乗り越えられてきたのだろう。

 「昨日今日だけの話なんでまだまだですけど、結果を残していきたいです」

 5位ヤクルトを相手に連敗を3でストップ。前半戦の最下位ターン確定を、ひとまずは回避した。1イニング3得点を挙げるのは、6月3日西武戦(甲子園)の4回裏3得点以来。猛虎を苦しめた3点の壁を、あと1本の壁を、高山がぶち破った。【梶本長之】

▼阪神高山が6月10日の日本ハム戦以来となる、6度目の猛打賞。1試合4安打が3度、3安打がこの日を含め3度となった。阪神新人で7度猛打賞を記録している岡田彰布(80年)と今岡誠(97年)に、高山はあと1度で肩を並べる。球団新人最多は坪井智哉(98年)の11度だ。

 ▼阪神の1イニング3得点は、6月3日西武戦(4回裏)以来、29試合ぶり。この間28試合の計250イニング(6月24日広島戦、9回表攻撃中降雨コールドの0を含まず)では、1イニングに2点を挙げたのが20度、1点が24度で、無得点は206度だった。