今こそ力を! 広島会沢翼捕手(28)が4号ソロを放つも、チームを白星に導くことは出来なかった。前日2日にバレンティンのバットを後頭部に受けた石原は出場選手登録を抹消された。「脳振とう特例措置」が適用されるとはいえ、復帰まで最短でも1週間はかかる。正念場の8月戦線。会沢の力が試される。

 マスク越しに会沢は山田の決勝弾を見た。同点の7回2死三塁だった。歩かせてもいい場面。山田の足元に目をやり、股の間で指を折った。ヘーゲンズに要求したのは内角へのツーシーム。だが初球が真ん中に入った。危機を感じた瞬間、山田のバットが目の前を通り、打球は一気に左翼スタンドへと消えた。決勝2ランだった。

 「あそこはもう少し慎重に入るべきでした。インコースへのツーシームだったんですが…」

 石原が出場選手登録を抹消される緊急事態。開幕から徐々に出番が減っていった会沢に、出番が回ってきた。野村、岡田の登板時のスタメンマスクを石原に奪われていた。正捕手不在が敗因と言われるのは「悔しい。しっかりやらないと」。ボール先行の先発九里を懸命にリード。勝負を急ぐ九里に、タテにヨコに何度も腕を広げてゾーンを広く使えと指示した。それでも、敗戦の責任を背負い込んだ。

 自慢のバットでは豪快弾で魅了した。5回2死から左翼スタンドへ4号ソロ。直球を力強く振り抜いた。開幕前から「とにかくチームが勝てばなんでもいい」と意気込んでいた選手会副会長。「負けてしまったので。もっともっと貢献しないと」と多くを語らなかったが、7月3日以来の1発には、会沢の魅力が十分につまっていた。

 今季節目の100試合目に敗れ、2位巨人とは7ゲーム差につめられた。ただ貯金は20で、最短7日にも優勝へのマジックが点灯する。緒方監督は「選手も成長している。ここで止まるわけにはいかない。勝っても負けても、反省の繰り返し」と前を向いた。会沢も成長を続ける1人だ。重要な8月戦線の旗振り役になる。ピンチを、チャンスに変える。【池本泰尚】