若虎が宿敵に意地の勝利だ。阪神北條史也内野手(22)が巨人戦の延長10回、決勝の右中間二塁打を放った。今季チームが大きく負け越し、自身も抑え込まれていた巨人相手に初打点を記録した一打で、チームの連敗を4で止めた。4位に浮上し、3位DeNAとは再び3・5ゲーム差。CS出場圏争いで踏みとどまった。

 未来をつかむ弾道が右中間に伸びた。巨人とのタイトゲームで勝利をたぐり寄せたのは北條だ。延長10回2死一、二塁。直前に上本へのカウントが3ボールになると、相手バッテリーは敬遠気味に外し、塁を埋めていた。3球目だ。低めのシュートを鋭く捉えると前進守備網を破る、勝ち越しの適時二塁打になった。

 「上本さんが(8回に)ホームランを打っていたので僕で勝負するかなと思って準備していました。2死だったので強い気持ちを持っていかないと。初球から逆方向を意識して、いいバットの軌道で打てました」

 4連敗で止めた若虎の一打に、金本監督も「ああいう場面で打ってこそ打者の価値だから。あそこでホンマに、よく打ってくれた」。この日でチームは巨人戦6勝12敗1分け。今季、宿敵に大きく負け越すなかで巨人戦初打点。自身も試合前までG投に43打数6安打(打率1割4分)だったが、意地のV打だ。シーズン終盤、充実ぶりは若手のなかで群を抜く。鳥谷に定位置を譲らず、遊撃先発で打点を挙げれば7戦全勝。8月は打率3割5厘で、月間9二塁打は開幕からの4カ月間の本数と並ぶ。しぶとく、勝負強くなってきた。

 今季は1度も2軍に降格せず、4年目で開花の予感漂う。広島鈴木、ロッテ田村…。ドラフト同期の高卒ホープが先んじて1軍で活躍すると球団内で「北條に出てきてほしい」と待望する声が挙がった。苦しみながら、金本監督らの指導でメキメキと力をつけた。開幕後、阪神の球団首脳は会合でセ・リーグ他球団の首脳からうらやむように「阪神さんも大変でしょう。藤浪や北條ら若手が多いから、たくさん抜けるとペナントレースを戦うのが厳しくなるんじゃないか」と言われた。20年の東京五輪中、公式戦を中断する方針を話し合うなかでの一コマだ。

 もちろん、北條がこの話題を知るはずもない。マイクに向かって「1試合1試合、勝つことだけを考えて」と言い切る。3位DeNAと再び3・5差に迫り、明日23日から直接対決だ。いまは上位と差を詰めることに全力を注ぐ。そして4年後、さらに、その先へ。1歩ずつ着実に、自らのバットで将来を切り開いていく。【酒井俊作】