巨人は1発病が克服できず、クライマックスシリーズ(CS)の敗退危機に立たされた。ファーストステージ開幕戦のDeNA戦で2度のリードを奪いながらも、6回に警戒していた筒香に逆転2ランを浴びるなど計3被弾で散った。ペナント中から“7連敗”となりDeNAアレルギーは顕著。現行のプレーオフ導入後、黒星発進からファイナルに進出したのは06年のソフトバンク、09年の中日だけ。崖っぷちからの奇跡に挑むことになった。

 高い代償を払った経験が、リードする小林誠の脳裏にはあった。だがマイコラスの心は筒香を抑えてきた自負で占められていた。バッテリーの意向のズレが、致命傷となる。1点リードの6回2死一塁、3-1。本塁打王と強行に勝負する必要はない。「歩かせてもいい」と若き正捕手は外角に構える。過去2年で15打数3安打、1度の被弾経験もない助っ人は「アグレッシブにゾーンの中で勝負していい結果を生んできた」とストライクゾーンでの勝負にこだわった。

 チェンジアップは低めに沈んだが、やや甘めに内側に入り、2人は放物線をぼうぜんと見届けた。7月22日の対戦がフラッシュバックした。投手は山口だったが延長12回1死、フルカウントからのストライクゾーンへの直球勝負でサヨナラ弾を食らった。小林誠は「四球でも良かった」との反省を刻んでいた。だが体調不良の菅野の代役でCS開幕投手を務めたマイコラスは絶好調で自信もみなぎっていた。小林誠の「はっきり歩かせても良かったと思う」との反省とは対照的に「悪いボールではなかった」と最後まで言い切った。

 筒香だけではない。3回に梶谷に同点弾、9回にロペスにダメ押し弾を許した。筒香、梶谷にはシーズン中から3戦連発、ロペスには4戦連発。1発病にむしばまれている。高橋監督は筒香の場面に「結果論になる。打たれたのは力負けでしょう」と答えた。

 苦境に立たされたのは、まぎれもない現実。両リーグで現行のプレーオフ導入後、CSファーストステージ初戦で敗れてファイナルに進出できたのは2チームだけ。10%の奇跡を起こすしかない。【広重竜太郎】

 ▼巨人投手陣は、また同じ打者に打たれた。今季このカードでは24本塁打を浴びていたが、うち19本(79%)までが梶谷(4)ロペス(8)筒香(7)の3人。特に終盤の6連敗中は

 梶谷 打率5割6分5厘、3本塁打、11打点

 ロペス 打率5割6分5厘、4本塁打、8打点

 筒香 打率4割3分5厘、4本塁打、9打点

 と一層打たれていた。これでレギュラーシーズンから巨人はロペスに4戦連発、梶谷と筒香に3戦連発を食らった。巨人がCSで1試合3被本塁打は14年ファイナルS第4戦で阪神マートン、福留、西岡に打たれて以来2度目の最多タイ。