ソフトバンクが2戦連続の逆転勝ちで、クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージを突破した。

 4回、7番で先発起用した明石健志内野手(30)の適時打で同点に追いつくと、5回には本多雄一内野手(31)が勝ち越し適時打。脇を固める選手の活躍で、前半戦の強さが復活した。6年連続で3位チームが勝ち抜くジンクスも打破。12日から札幌ドームで始まるファイナルステージで、日本ハムにシーズンの雪辱を期す。

 強いホークスが帰ってきた。満員の観衆を前に、本多が言った。「タイムリーは打ったが、1つの守備や犠打、そういう1つずつが勝ちにつながった。一体感を感じている」。5回に9番高谷が作ったチャンスを生かし、右前に勝ち越し打。初戦は4番内川が打ち、この日は脇役が躍動して2戦連続の逆転勝ち。ロッテの「下克上」を阻止した。

 工藤監督が下した決断がポイントになった。7番を誰に任せるか。江川が候補に挙がった。石川に対し、今季2打数2安打1本塁打と相性がいい。しかし指揮官は明石を選択。「バッティングの感じが良かった。逆方向を意識していたし、捉え方がよかった。コントロールのいい投手は、逆方向の方が打つ確率が上がる」。自らの直感を信じた。読みがピタリと的中。1点を追う4回2死二塁。石川が内角を厳しく突いた直球に明石は左翼線へ流し打った。「(再現は)もう無理…」と本人が言うほど絶妙のバットコントロールだった。1安打3四球で全打席に出塁。逆転劇の立役者になった。

 前半戦の快進撃から一転し、日本ハムに最大11・5ゲーム差を逆転された。指揮官は思うところがあった。「選手のことを近くで見ようと思ったけど、上から全体を見ることも大事だったな…」。昨年とは違い、投打に限らず、積極的に選手に助言。1人1人の状態を向上させようと細部にこだわった。しかし「将」として、俯瞰(ふかん)して戦況を見つめることがおろそかになった。後半戦はチームの失速を止められず、自らを省みた。敗戦から学び、勝負師の勘を取り戻した。

 就任1年目の昨年からCSは無傷の5連勝。工藤監督は力を込めた。「ここ(本拠地)に戻ってくる気持ちは当然ある。そのためにも、ファイナルは強い気持ちを持って戦う」。日本ハムに雪辱を果たす。思いは1つだ。【田口真一郎】

 ▼ソフトバンクが2連勝でファイナルS進出を決めた。パ・リーグのCSで2位チームが1Sを勝ち上がったのは09年楽天以来だ。ソフトバンクのファイナルS出場はプレーオフ時代を含め3年連続9度目で、1Sを突破して出場は06、12年に次いで3度目。06、12年はファイナルSで日本ハムに1勝も出来ずに敗退し日本シリーズに出場できなかったが、今年はどうか。

 ▼工藤監督は昨年のファイナルSが3勝0敗(アドバンテージの1勝を除く)で、CSは昨年から5戦5勝。プレーオフ、CSで初采配から無傷の5連勝は、07年1S○○、2S○○○、08年1S○と6連勝した落合監督(中日)に次いで2人目だ。昨年の日本シリーズは4勝1敗だから、工藤監督のポストシーズンは通算9勝1敗。1敗は神宮球場で、ヤフオクドームのポストシーズンは7戦7勝となった。