「正義VS翔平」の剛腕対決だ。「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」が20日に都内で開催され、今ドラフトの目玉で最速156キロ右腕の創価大・田中正義投手(4年=創価)は、5球団競合の末にソフトバンクが交渉権を獲得した。東京・八王子市内の創価大の会場には、51社143人の報道陣と学生ら約1300人が集結。注目度NO・1の日本ハム大谷世代の剛腕は「大谷君と同じ舞台で対決できるところまで成長したい」と決意を新たにした。

 午後5時23分、田中に今年一番の笑みがこぼれた。5球団による抽選でソフトバンク工藤監督が当たりくじを引き当てると、ホッとした表情で白い歯を見せた。「思ったより緊張したけど、無事に決まって良かった。行きたかった球団の1つだし、素直にうれしかった」。16日に今秋のリーグ優勝を決めた際にもできなかった胴上げで、気持ちよさそうに宙を舞った。

 自慢の直球で、大谷に勝負を挑む。野球を始めた小学校低学年から「真っすぐが速い、本格派といわれる投手が好きだった」。レンジャーズのダルビッシュ、ロッテ涌井らに憧れた。16日のクライマックスシリーズ・ファイナルステージのソフトバンク戦(札幌ドーム)で、大谷が日本最速165キロを出した場面は「感動した」。今度は自分が、ファンの心をつかむ番だ。「田中が先発だから球場に行こう、田中がいなかったら心細いな、と思われる投手になりたい」。球速の目標は「秘密で」と笑った。

 ケガに悩まされても、人生を左右するビッグチャンスはつかんできた。右肩を痛めて外野手だった高校時代は4番。長打力に定評があったが、すぐに岸雅司監督(61)は見抜いた。「変化球に対応できないし、野手の顔じゃない」。田中自身も「投手じゃなければ、野球をやっている感じがしない」。投手志望だった。偶然にも思惑が一致し、1年秋の新人戦で初登板のチャンスをつかんだ。結果は7回1安打11奪三振の快投。打者のバットにボールが当たらなかった。監督は「(OBのヤクルト)小川以上だ。こんな投手見たことない」。大谷世代の大学NO・1右腕は、運命に導かれるように誕生した。

 理想は「狙われても打たれない、打者に嫌がられる真っすぐ」と言った。ソフトバンクでのお手本には「バンデンハーク投手やサファテ投手にも話を聞いてみたい」と、意外な名前を挙げた。工藤監督からは「開幕投手を目指すつもりで頑張って」とエールを送られた。「本気ではないと思いますが、努力してこいということ。工藤監督のように息の長い選手になりたい」。お笑いコンビ博多華丸・大吉のファンでもある田中が、福岡と全国のファンを驚かせる。【鹿野雄太】