球界の功労者をたたえる野球殿堂入りが16日、都内の野球殿堂博物館で発表された。監督歴代10位の1181勝を挙げた楽天星野仙一副会長(69)と、大洋(現DeNA)で通算201勝を挙げた平松政次氏(69)はエキスパート表彰。黄金期の西武を正捕手として支えたロッテ伊東勤監督(54)がプレーヤー表彰を受けた。

 星野氏は自分の殿堂入りを傍らに置いた。「プレーヤーとしては大したことない。監督としては、まぁ。最下位のチームを引き受けて、2、3年で優勝できて。選手に感謝します」。恩師である明大・島岡監督のレリーフ前ではさすがに破顔一笑した。代名詞の打倒巨人は「日本シリーズも『巨人、出てくれ~』と。巨人だから第7戦までいけた。日本一が証しかな」と軽く流した。ハレの日に、どうしても訴えたい思いがあった。

 スピーチの大半を野球界の未来に割いた。「野球界全体。子どもたちの底辺拡大。高校、大学、社会人も結集して、野球界が1つになっていくことを後押ししたい」。こうも言った。「この年齢になって勝った負けた、どこが優勝とか…。楽天は考えないといけないんだけど。(勝敗以上に)『野球はどうあるべきか』を掘り下げて考えたい」。

 13年に宿敵巨人を倒して日本一になった。目標を成し遂げたから満足し、足を止める人生に魅力を感じない。「アマの指導者が育て、ドラフトでおいしいところをプロが取る。我々はアマの卒業生。もう1回、考えなくては。底辺を広げる。これは大変なことなんだ。もっともっと、もっと1つにならなくてはいけない。OBみんなが真剣に考えないと」。構造改革を最後の大仕事と決めている。

 根っこの自分に従った。「足跡を残すということが、何より大事なんだ。採算とか考えていたら歴史は作れない。明治維新も一緒。伊藤博文、大久保利通、板垣退助とか、生き残った人間がやった。でも、その前に犠牲になった人がいたからこそ。今は物事を合理的に考えすぎている。野球はもう日本の国技で、アメリカだけのものじゃないんだ」。殿堂が終点じゃない。もっと大きな足跡を残す。【宮下敬至】

 ◆星野仙一(ほしの・せんいち)1947年(昭22)1月22日、岡山県生まれ。倉敷商から明大を経て68年ドラフト1位で中日入団。74年最多セーブ、沢村賞。82年引退後、解説者を経て87年に中日監督就任。中日で88、99年、阪神で03年に優勝、史上初めてセ2球団をリーグ優勝へ導いた。楽天では13年に球団初の日本一となり、3球団で優勝した監督は三原脩、西本幸雄に次ぎ3人目。監督通算1181勝は歴代10位。03、13年正力賞。08年北京五輪では日本代表監督(4位)。現楽天副会長。