“17年版涌井”が好スタートを切った。ロッテの開幕投手に指名されている涌井秀章投手(30)が5日、中日戦(ナゴヤドーム)に先発。今年初めての実戦マウンドで、2回1安打無失点に抑えた。昨季まで投げていたスプリットよりも落差を大きくしたフォークで空振り三振を奪い、これまでより多めにカーブも試した。進化した姿で順調ぶりを印象づけた。

 指先に手応えが残った。2回先頭。涌井は中日藤井をカウント2-2と追い込むと、低めにフォークを落とし込んだ。大きな落差で、バットにかすらせなかった。「今日、投げてみたら使えそう。ベンチで見ていた(正捕手の)田村も『落ちてました』と言ってくれた」。空振り三振。思惑通りの結果を淡々と振り返った。

 西武時代はフォークも武器としていたが「ここ数年、落ちなくなった」と、ロッテ移籍後は握りを浅くしたスプリットに変えていた。だが「三振を狙った時に取れるように」とフォーク解禁を決意。「良い投げ方になったのだと思う」と、以前と同じ握りでもしっかり落ちた。今年初実戦で早速、答えを出した。

 もうひとつ、試したのがカーブだ。全28球のうち、4分の1の7球と多かった。きっかけは伊東監督の言葉。キャンプ中に「緩い球を使ったら」と助言された。「僕は速い変化球が多い。カーブなら打者の目線を変えて、投球の幅も広がる」と理解。実戦投げ始めとあって、まだ低めに外れる割合が多かったが「(ボールを)離すところを変えればいいかなと思う」と、こちらの感触も悪くない。

 プロ13年目。通算118勝の大黒柱となっても、自らのスタイルを変えることをいとわない。正確には「変えるというよりも、プラスアルファです」と言った。なお新たな引き出しを増やそうとしている。既に、3年連続8度目となる開幕投手に決定。「まだ1カ月弱ある。近くなったら、気持ちを入れて。でも、信頼されているのはうれしい。期待に応えたい」と、静かに決意を口にした。オフにはモデルの押切もえと結婚。公私充実のエースが、今年もチームを引っ張っていく。【古川真弥】