プレーバック日刊スポーツ! 過去の3月21日付紙面を振り返ります。2006年の1面(東京版)はWBC王JAPANの決勝前日に王監督のシューズが野球殿堂博物館に展示されることが内定した話題でした。

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 【サンディエゴ(米カリフォルニア州)19日(日本時間20日)】王JAPANが初代王者となって、世界の野球史に大きな足跡を刻む。国別対抗戦「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」日本代表は今日20日(同21日)ペトコ・パアークで午後6時(同午前11時)からキューバと決勝戦を行う。決戦前のこの日、米ニューヨーク州クーパーズタウンの野球殿堂博物館関係者が訪れ、王貞治監督(65)のシューズが同殿堂に展示されることが内定した。王監督は先発に松坂大輔投手(25)を指名し、2番手に渡辺俊介投手(29)、最後を大塚晶則投手(34)で締める必勝リレーを想定。アマチュア世界王者のキューバを倒し、初代WBC世界王者の座をつかむ。

 決勝戦を翌日に控え、王監督は感慨深げに言った。

 「今までは米国が野球で一番だと思われていた。それが今回の決勝では日本とキューバが出た。日本の野球を世界に示すことができたが、ほかの国にも刺激になったと思う。これもWBCのいいところだよ」。

 もちろん決勝進出で満足する王監督ではない。世界一まであと1勝。必勝で臨む。相手はアマ王者キューバ。ベールに包まれたチームだけに情報量は少ないがイメージはできている。

 「昔のリナレスやキンデランがいた時の野球じゃない。金属バットから木製になって、野球に対する考え方が変わったんじゃないかな」。

 18日の準決勝を視察。かつてのスピード、パワー野球から脱却していることを痛感した。「アメリカ的というより、むしろ日本的。鏡を見て野球をやらなきゃな。お互いにドカンドカンとはいかない。細かく、うまくつなげた方が勝つ」と接戦を覚悟した。

 王JAPANも韓国戦で打線は目覚めたが、やはりカギは投手が握る。先発には松坂を指名した。「調子はどんどん上がってますよ。これで終わりじゃないし、この後に本番(日本の公式戦)があるわけだから」。球数制限は95球に緩和されているが、球数の多いタイプの松坂だけに継投がテーマになる。「松坂で本格的にいって、その後に渡辺俊が幻惑させてくれるだろう」。単純に松坂の直球と渡辺俊のカーブを比較すれば、約60キロの緩急がある。加えて本格派と地面スレスレから投げる下手投げ。この両極端を最大限に生かす。「松坂、渡辺俊、大塚の3人で終わればね」。この3投手のリレーこそが、王JAPANの「世界一の方程式」というわけだ。

 そんな王JAPANの「戦いの軌跡」が野球の聖地、クーパーズタウンに刻まれる。野球の世界最強国を決めるWBCの第1回大会。野球宗主国の米国も果たせなかった決勝進出を、日本は果たした。その第1回を象徴する野球用具として、決勝戦のグラウンドの土を踏みしめる王監督のシューズを、日本を代表して野球殿堂博物館に展示することが内定した。

 すでに野球殿堂博物館には、ハンク・アーロン氏の本塁打記録を破った打者として、王監督の一本足打法の写真パネルが飾られている。日本人選手でも、イチローが04年にメジャー最多記録262安打を樹立した時の用具、ヤンキース松井のメジャー初本塁打バットなどが展示されている。ただ、今回は選手個人ではない。世界に日本野球を知らしめた王JAPANの活躍が、野球の本場、米国で評価された証しだ。

 全体練習後、午後7時から決起集会の食事会が行われた。「最後だからね。文句のない最高の舞台。明日でとにかく終わりなんだから。気は楽ですよ」。世界一を前にしても背伸びはしない。ここまで勝ち上がってきた、王JAPANの戦いをするだけだ。

※記録と表記は当時のもの