阪神糸原健斗内野手(24=JX-ENEOS)に愛情たっぷりのエールが届いた。29日、12球団の開幕1軍メンバーが公示され、阪神の新人内野手では、04年鳥谷以来13年ぶりとなる開幕1軍が正式に決定。糸原を鍛え上げた島根・開星の元監督、野々村直通氏(65)が日刊スポーツを通じて教え子に激熱メッセージを送った。

 すごいことですよ。開幕1軍なんて、想像以上。野球から離れて5年たつけど、いい教え子のおかげで、いい余生を過ごすことが出来ている。つくづくそう思いますよ。あいつは(教え子の中で)最後のプロ野球選手だからね。いつまでも青春でいさせてもらっている。子供を超えて孫を見る感じ。あいつはね。もう、かわいいを通り越して、いとおしいんです。

 プロ野球選手としては小さいでしょ(175センチ)。だけど選手としては球際に強い。しぶとく食らいついていく。本人もそれがないとやっていけないと思っている。ドラフトで指名されたときはよくこの体で指名されたなと思って、いとおしくなったんです。飛び抜けた努力を積み重ねてきた結果だと思います。体の小さな子に夢を与える存在になってほしい。

 中学2年のときからあいつのプレーを見ていたんです。すごくセンスを感じた。開星に入ってきて1年生の時からベンチに入れさせた。甲子園の大きさ、雰囲気を感じろと。特別枠ですよ。将来チームを背負うと思っていた。あいつには魂があるんです。これまでプロ野球選手になった教え子のなかで、一番チビだけど、一番魂がある。プロでもそういう部分を期待している。

 高校1年から試合に出ていたけど、無死一塁で送りバントをさせたことは1度もない。あいつはね。初球でサインを出すと、こっちを振り向きもしない。普通の高校生ならいちいちこっちを見るんだよね。監督の顔色を見る。あの子は最初にこっちを見て「打て」のサインを出すと、「やっぱりな。任せて下さい」という顔をしてこっちを見ない。肝が据わっているんです。

 プロにいくのは天才ですが、プロ野球選手は入ってから血のにじむ努力をしている。周りはみんな天才だけど、自分は選ばれた存在だとは思わないでほしい。(開幕戦の)マツダスタジアムには行きません。俺がいくと打たないから(笑い)。一ファンとして静かに応援します。

 ◆野々村直通(ののむら・なおみち)1951年(昭26)12月14日、島根・雲南市生まれ。大東高から広島大教育学部美術科に進み油絵を専攻。野球部では主将として全国大会に出場した。79年春に府中東監督として初の甲子園。86年に松江第一(現開星)に赴任し、88年の野球部創部とともに監督に就任。甲子園には府中東時代含め春夏通算10度出場した。現在は教育評論家、画家として活動中。

 ◆野々村監督の不適切発言 10年センバツで開星を率いて挑んだが、21世紀枠の向陽(和歌山)に初戦敗退し「末代までの恥。腹を切りたい」と発言。問題視され監督を辞任し、11年4月に1年限定で復帰。12年3月で同校を定年退職した。こわもての風貌もあり、全国大会に出場すると注目された。