金本采配ズバリで巨人戦勝ち越しだ。巨人内海対策で今季初の1番を任された阪神中谷将大外野手(24)が、初回の左翼線二塁打に続き、3回には中前打でチャンスメーク。2安打2得点で期待に応えた。打線は下降気味だったが、金本知憲監督(49)が「バーンと打って景気よく」と、起用した左腕キラーが起爆剤となる大活躍。今年の虎には、ジョーカー的な役割を果たせる男がいるから頼もしい。

 24歳の若武者がG倒の扉を開いた。中谷だ。初回だ。巨人内海の3球目に迷わずバットを振り抜いた。打球は左翼線に駆け抜け、二塁打になった。積極的な打撃が福留の先制打を呼んだ。「後ろがすごい人ばかり。とにかく塁に出ようという気持ちだった」。3回にも中前打でチャンスメーク。2度目のホームを踏み、2安打2得点の活躍。リードオフマンの役割を果たした。

 敵地6連戦で打線は湿っていた。<3><3><2><4><1>がこの5試合の得点だ。勢いがつかず、接戦の連続だった。この日は左腕内海が相手。20日の中日戦と同様に、1番に北條を置き、中谷を6番で起用する選択肢もあった。しかし金本監督は思った。「守り勝つのも野球だが、勢いをつけるためには、バーンと打って、景気よく、たまには勝ちたい」。

 高山は今季、対左腕に2割3分5厘。長打も見込める中谷の思い切りのいい打撃にかけた。片岡打撃コーチに自らの考えを伝えると、意見は一致。先発オーダーの先頭に中谷の名前を記した。15年8月7日のDeNA戦以来、金本政権下では初の1番起用だった。

 若手の成長が見られるチームにあって、中谷の存在は選手層に厚みをもたらしている。今季は速球に振り負けなくなった。指揮官に認められ、クリーンアップ候補に挙がる。福留の休養日だけでなく、調子を落としている高山の代役も務められることを証明。ジョーカー的な役割を担い、攻撃力ダウンを防いでいる。継続して打席に立てない中で、21打数6安打、打率2割8分6厘は大健闘。対左腕は打率4割に跳ね上がる。「緊張しそうだったので、なるべくしないようにした。調子は分からないが、試合に出たら、アピールすることしか考えていない」。出場機会に飢え、スタメン奪取のチャンスは逃さない。中谷の気迫がチームを引っ張った。【田口真一郎】