楽天の美馬学投手(30)が力を発揮した。29日の日本ハム戦に先発して、7回5安打2失点と好投。5回にソロ本塁打を浴びた日本ハムの7番大田泰示外野手(26)を、2-2の7回1死一、二塁では投ゴロ併殺に仕留めて勝ち越しを許さなかった。チームは9回サヨナラ負けで今季初の5連勝を逃したが、開幕投手を務めた右腕は、先発の役目を果たし、敗戦の中でもキラリ輝いた。

 ハーラートップに並ぶ無傷の4勝目が持ち越しになっても、美馬の表情に暗さはなかった。「7回途中で代えられる感じでしたけど、あそこを何とか投げ切ったのが良かったと思います」。7回を投げ終えて球数は88と少なかった。球威がまだ衰えていなかったのも、ピンチを乗り切れた大きな要因になった。

 7回、先頭の中田に死球を与えた。13年8月に美馬から死球を受け、左手第5中手骨を亀裂骨折し、残りシーズンをほぼ棒に振った日本ハムの主砲は、美馬へ向かって怒りの言葉を投げかけた。マウンドへ詰め寄ろうとし、一触即発のムード。それでもプロ7年目の右腕は冷静になって、後続を断つことだけに集中した。梨田監督は「前回完投していて、7回を投げ切ってくれた。先発の役目を果たしてくれた」と評価した。

 22日のソフトバンク戦で、今季楽天初の完投を勝利で飾った。この日は9回に守護神・松井裕が崩れてサヨナラ負けした。だが7回を投げたことで、開幕からフル回転しているハーマン、菅原ら中継ぎを再び休ませることができた。5試合に登板した美馬の投球回数はチーム最多の33回2/3。既に3勝を挙げ、先発投手では一番の働きを示す。

 捕手の嶋が腰痛のため登録を抹消された。代わって先発マスクをかぶった足立とのバッテリーでも力を発揮した。5回に浴びた本塁打を「あれが余計。もう少し落ち着いていれば」と反省材料を残したが、打線は美馬の好投に報いるように、2点を追う7回に同点に追いついた。

 「明日は岸さんがしっかり投げてもらえると思います」と言った。他の投手を思いやり、激励も忘れないほど、今の美馬には心のゆとりもある。【久野朗】