巨人小林誠司捕手(27)が上げ潮の気配を漂わせた。1点を追う2回2死二、三塁。DeNA水野の外角スライダーに食らいついた。カウント1-1からの3球目、見逃せばボールだったが「必死に打ちにいきました。すぐに勝ち越すことができて良かったです」と2者を生還させ、試合をひっくり返した。

 開幕から極度の打撃不振に苦しんだ。正捕手を務めたWBCでは、打率4割5分をマーク。ラッキーボーイとして一躍、時の人と化した。「当然ですけど、あれが実力だとは思っていない」と慢心はなかったがバットが急激に冷え込んだ。開幕から15試合を消化した時点で打率9分3厘。1割にすら満たない苦悩の日々が続いた。

 打開策は“侍モードの決別”だった。左足を上げて強いスイングで結果を出したWBCの打撃フォームを消し去り、すり足打法に切り替えた。「コーチからアドバイスをもらって取り組んでいる」と連日の早出特打でコンパクトなスイングを徹底的に意識した。「チームに迷惑ばかりかけている。何かを変えないといけない」と、この日を含め4試合連続安打と改善への糸口をようやく見いだした。

 打撃不振の中でも捕手としての精神は忘れなかった。「守備は投手との連係。バチッと切り替えないと投手に申し訳ない」と女房役に徹した。攻守で役割を果たしチームを連勝&4カードぶりの勝ち越しに導いた。高橋監督は「よく打ってくれたけど、もう少し打ってほしい」。巨人の正捕手にかかる期待は大きい。【為田聡史】