口を真一文字に結んだ。ダイヤモンドを周回した巨人長野は、ベンチに腰を下ろすと、打撃が映し出されたセンターの大型ビジョンに目をやった。4回無死、阪神岩貞の真ん中高めの直球を右中間席に放り込んだ。今季91打席目で待望の1発。「しっかりとバットの芯で捉えられました」と控えめに話した。6日中日戦で今季初の3安打猛打賞をマークするも、ここ2戦は無安打。打率1割台に沈む現状に手放しで喜べるはずもなかった。

 1月のグアム自主トレで下半身の徹底強化に着手した。帰国の直前までほとんどバットを握らずにランニングとサーキットメニューを中心に取り組んだ。「今、バッティングをすると上体だけで打ってしまう。下半身をしっかりと作ってからにしようと思っている」と、理由を説明した。だが、思惑通りには進まなかった。開幕後に、14年オフに手術した古傷の右膝に不安を覚えた。長野本人が患部の状態を口にすることは1度もなかったが、不振の引き金になったことは明らかだった。

 実績十分の主力打者だけに、コンディションの回復と復調は比例する。この日、5回1死一、二塁の好機で当たりは良かったが、左翼手の正面を突き、得点圏は20打数無安打と課題を残す。高橋監督は「なんとかきっかけをつかんでほしい。本人も何とか巻き返してほしいなと思います」と今季1号の相乗効果を期待した。【為田聡史】