5分で「中日松坂」が誕生した。昨季限りでソフトバンクを退団した松坂大輔投手(37)が23日、中日の入団テストをナゴヤ球場の室内練習場で受け、約5分、22球で合格した。

 松坂合格後の森監督の「このままずっと見ていたいと思った」のコメントに、99年オフを思い出した。当時、森監督は西武2軍投手コーチを解任された。球団創設年のドラフト1位が入団から20年在籍したチームから去ることになった。黄金ルーキー松坂を擁しながら、リーグ3連覇を逃した東尾監督の下、指導者の若返りを目指しての人事とされたが、森監督はまだ45歳。「クビだよクビ」と、夕暮れの2軍施設に荷物整理に訪れたのが、さびしそうだった。手塩にかけた西口、石井貴らが成長したところに松坂も加わった。2軍コーチとはいえ、逸材ぞろいの投手陣に未練があったはずだ。

 松坂との接点はその年だけなのだが、キャンプから1度も2軍落ちはなかった。だから、直接指導したことはない。唯一手を差し伸べたのは1、2軍が同じ施設を使う高知・春野キャンプ。ファンでごった返す中、同じ背格好の投手に松坂のユニホームを着せ、ファンの注目を集めさせたすきに、松坂本人を移動させる「影武者伝説」の発案者が森監督だった。当時も今も笑い話なのだが、実は堤義明元オーナーだけは「ファンを欺いた」と激怒。そのオフの解任理由の1つだとささやかれた。

 中日白井オーナーが獲得に疑念を示すなど、20年近くがすぎても、2人が交わると球団トップが強く反応する。偶然とは思えない。それが都市伝説だとしても、新たな伝説には違いない。【99~01年西武担当・久我悟】