「育成の星」巨人メルセデスがまた1つ、希望のわだちを残した。阪神打線を7回6安打無失点に抑え、2勝目を挙げた。育成出身のデビュー2戦2勝は史上初。連続無失点も12回に伸ばし「非常にハッピーな気持ち。頑張ったかいがあった」と胸をなで下ろした。

 安全運転を心がけたが、ピンチではギアを1段上げた。3点リードの3回2死一、二塁。福留へカウント1-2からの5球目。143キロの直球で内角を攻めたが、ボール1つ分、内へわずかに外れた。それでも「低めなら打たれる確率は減る。ゴロを打たせようと思った」と切り替えた。最後は120キロのカーブで遊ゴロ。狙いがはまった。

 ミットめがけて迷わず腕を振った。7回まで108球中71球がストライクゾーンへ。6割を超えれば好投手と呼ばれるストライク率は65・7%。前回登板の10日ヤクルト戦は68・1%(88球中60球)だった。「少ない球数で長い回を投げようと意識した」と持ち味を十二分に発揮した。

 オーバーヒートの心配は無用だ。この日は全国的に高温注意報が出され、甲子園のある兵庫・西宮市も最高気温36度。試合開始時の18時は気温34度、湿度は70%を超えた。それでも「地元も常に暑かったし、全く問題ない」と対策も取らなかった。夏場は常時30度を超えるドミニカ共和国出身らしく、クールに投げきった。「チャンスがもらえたら最少失点で抑えるだけだよ」。まじめな左腕が、今日も無事故で仕事を全うした。【桑原幹久】